競技の奥深さや魅力をスペシャリストに聞く「教えて○○さん」の第1回は、ソフトボール編です。08年北京オリンピック(五輪)では投手として金メダルに貢献した坂井寛子さん(42)に高めのライズボールの投げ方を教えてもらいます。野球にはなく、打者の手元で浮き上がってくるソフトボール独特の球種。そのちょっと投げてみたくなる“魔球”について聞いてみました。【取材・構成=上田悠太】

直球とライズボールの軌道(写真は合成)
直球とライズボールの軌道(写真は合成)

■握りは浅めに

-まず握り方を教えてください。

ライズボールの握り
ライズボールの握り

<1>まずボール縫い目のCのカーブに合わせ、人さし指を置き、第1関節を親指側に少しねじります。ねじった人さし指の中指側を縫い目にかけます。

<2>親指は縫い目の上に置きます。

<3>中指も縫い目に沿わせます。

<4>薬指、小指でボールを軽く押さえます。

<5>ボールは深く握りすぎず、気持ち浅めに。

ライズボールの握り
ライズボールの握り

■弾きリリース

-リリースで意識をすることは?

ライズボールの軌道(撮影・河田真司)
ライズボールの軌道(撮影・河田真司)

<1>まず手は甲を地面に向け、ひらをボールの下に入れるように入ります。

<2>手首は立てます。

<3>ボールを下からすくい上げるようにスナップをかけます。よく「ドアノブをひねるようなイメージ」とも言われます。そのガチャと回すような動きが回転を生み出します。

<4>ねじっていた人さし指の第1関節が引き戻される力を利用し、はじくように下から上のスピンをしっかりかけます。

<5>私なりのコツは人さし指を最後まで残すように投げることです。

ライズボールの軌道(撮影・河田真司)
ライズボールの軌道(撮影・河田真司)

■フライ確率アップ

<一問一答>

-そもそもライズボールとは? 

坂井さん 強烈なバックスピンをかけて、打者の手元でふわっと浮き上がるような軌道を描きます。研究などで原理的にはボールは浮いていないともされていますが、すごいライズは本当に浮いてるように見えますよ。

-どんな場面で特に有効ですか?

坂井さん フライアウトを取りたい時や空振り三振を取りたい時に使います。また相手がバントをしてきた時も、フライになる確率が上がります。打者の体を起こすことにもなり、目線をずらす効果もあります。ただ、しっかり回転がかからなかったり、コントロールミスをすると、長打にされる可能性が高い球種でもあります。

-コントロールで狙う位置

坂井さん ストライクからボールにしたいボールです。なので打者の肘、胸元付近のストライクゾーン一番高めを狙います。打者からすれば、そのまま来たら、ストライクだなという所に投げて、誘います。

-ソフトボール初心者でも投げられますか

坂井さん 難しい球種ではありますが、最初はみんな素人だったので絶対に無理とは言えないです。


ライズボールの投げ方を教えてくれた北京五輪金メダルの坂井寛子さん(撮影・河田真司)
ライズボールの投げ方を教えてくれた北京五輪金メダルの坂井寛子さん(撮影・河田真司)

◆坂井寛子(さかい・ひろこ)1978年(昭53)11月3日、福井県生まれ。金沢高卒業後、太陽誘電、戸田中央総合病院で活躍。04年アテネ五輪は2完封するなど銅メダルに貢献。05年に1度引退し、06年に復帰。金メダルだった08年北京五輪は1次リーグで多彩な変化球を武器に3勝をマークした。09年に現役を引退。現在は主に競技の普及や指導を行う。家族は夫と子ども2人。