「ライバルからのエール」最終回は卓球女子の早田ひな(20=日本生命)。東京オリンピック(五輪)3人の代表枠には届かなかったものの、6月5日に団体戦の補欠(1枠)に選ばれた。五輪期間中も会場の東京体育館で日本チームに同行し、3人の練習相手などサポート役に回る。日本のエースに成長した親友の伊藤美誠(20=スターツ)、頼れる先輩の石川佳純(28=全農)、同期でTリーグのチームメート平野美宇(21=日本生命)の3人を間近から全力で支える覚悟だ。
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落選の悔しさはとうに捨て去った。20年1月6日の代表発表から同13日の全日本選手権開幕までの短期間で一気に。「選ばれた3人が覆ることはない。一から頑張ろうと切り替え、悔しい感情を全て断ち切った」。その全日本のシングルス。準決勝で伊藤を、決勝で石川を破り初の日本一に輝いた。
長身と長い手足を武器に、日本女子では珍しいダイナミックでパワーのある左シェークハンドのドライブ型。24年パリ五輪では代表有力候補の1人だが、東京五輪では団体戦の補欠という立場。日本一を経験したトップ選手が普段経験しないサポート役に回るのは、そう簡単ではない。
完全に代表3人の方針に合わせた練習相手から、ボール拾いなどの雑用まで幅広くこなしながら万が一、誰か1人がケガや病欠となれば、自分がコートに立つ準備も並行して行わなくてはならない。
「私は3人のスケジュールに合わせて動く。3人の様子を見ながら、みんなの調子を上げるために練習相手を務め、チームが勝つために何をしなければいけないかを考えて行動したい。一方で試合出場の可能性がある以上、自分のコンディションも良い状態を保たなければいけない難しさもある」
団体戦の補欠メンバー選出を「一生に1度の難しい経験。それを無駄にするわけにはいかない。五輪でしか得られないことを学びながら、全力でサポートしたい」と常に前向きに話す。
「3人それぞれが、どうやれば自分の力が出せるか分かっている。そうでなければ五輪に出場するなんてできない。私は陰で見守り、選手が気を使わなくていいように、いろいろなことに気づいていくことが大事なのかなと思う。でももし、頼られて何かを求められれば全力で応えようと思う」
目指すは女王中国を倒しての金メダル。早田は悲願に向け、必死に下支えする覚悟だ。そして東京で得た知見をパリに生かす。「次の五輪のためにいろんなことを肌で感じたい」。今度は自分が夢の舞台に立つために。【三須一紀】
<親友みま:伊藤美誠>
17年アジア選手権でダブルスを組んだことがきっかけで、親友になった伊藤へは全幅の信頼を置く。「美誠の弱いところはほとんど見たことがない。リオで五輪を経験し、東京ではシングルスでメダルを取りたいと思っていると思う。(団体戦では)エースとして戦う。気が強いし、内に秘めた強さが彼女にはあるので、どんなに苦しい状況になっても、勝ちきる強さがある」と太鼓判を押した。
<ヒラミウ:平野美宇>
同じ2000年生まれの平野のことは「ヒラミウ」と呼ぶ。女子卓球界に「ミウ」「ミユ」「ミユウ」という、似た響きの名前が多いからだ。「ヒラミウはリオ五輪でリザーブで悔しい思いをして、そこから自分の力で東京五輪の切符を勝ち取った。この4年間の気持ちをやっとぶつけられる大会になると思う。自分のできることを精いっぱいやって、戦ってほしい」。自分が当時の平野と同じ立場でありながら、同期を思いやった。
<石川さん:石川佳純>
3度目の五輪出場となる石川に対しては、最年長としてかかる重圧をおもんぱかった。「キャプテンとして、私も含めて同世代3人を引っ張っていくプレッシャーもあるかと思う。前回大会までと違い、先輩がいないので頼れる部分が少ない。そういったところも私は気づけるようにしていきたい」。同時に「石川さんの強さは今でも、大一番の勝負強さ。私もまねられるように間近で勉強したい」と語った。
◆東京五輪の日本代表選考レース 19年シーズンを中心に行われた。世界選手権やワールドツアーで獲得できる世界ランキングポイントの高い選手が代表に選ばれる仕組み。日本人上位2人がシングルス、3人目の団体戦代表は日本協会の強化本部が選考する方式だった。20年1月発表の同ランキングにより代表が決まる中、早田は当時、23位で日本人では6番目だった。しかし、ダブルスが得意なことから代表候補には名前が挙がっていた。
◆早田(はやた)ひな 2000年(平12)7月7日、福岡県北九州市生まれ。08年北京、12年ロンドン五輪に出場した岸川聖也を輩出した石田卓球クラブで、4歳で卓球を始める。福岡・希望が丘高1年時に全国高校総体優勝。伊藤美誠とダブルスを組んだ世界選手権では17年銅、19年銀と2大会連続でメダル獲得。20年全日本選手権ではシングルスの初優勝と、伊藤とのダブルスで3連覇を果たした。世界ランキングは25位(6月29日発表)。167センチ。
(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「東京五輪がやってくる」)











