<JOCエリートアカデミー/安部学院高3年 向田真優さん(18)>

 5年前、三重県四日市市から上京して、エリートアカデミーに入校しました。「強くなりたい」。その一心だけでしたが、週6日の厳しい練習に、大会では2位止まりが多く、泣く日々が続きました。

 12年5月の東京五輪・パラリンピックの招致会見にエリートアカデミー代表として参加させてもらった時、「東京五輪で金メダル獲得」という強い思いになりました。それまでは「東京五輪に出場したい」と口で言うだけでしたが、それから意識改革をしました。オフ日も練習したり、参考とするマリア・スタドニク(アゼルバイジャン)や、対戦相手の動きをiPad(アイパッド)で研究するようになりました。国際大会でも結果も出るようになり、昨年8月の中国・南京ユース五輪では52キロ級で金メダルを獲得しました。

 最近では、同郷で同じ階級ということもあり、「吉田沙保里のライバル」「吉田2世」などと報じられていますが、私にとっては、近くて遠い「特別な存在」です。代表合宿ではスパーリングを一緒にさせていただき、五輪3連覇中の「女王」のオーラや立ち居振る舞い、生活面や競技面の全てを尊敬しています。

 ただ、試合となれば別です。6月にリオ五輪の出場権を懸けた全日本選抜選手権53キロ級の準決勝で初対戦し、タックルで2点を奪えました。予備動作なく飛び込んでくる高速タックルを防ぐのは難しいですが、大きな自信につながりました。吉田さんが現役を引退する前に「勝ちたい」という目標もあります。勝って、東京五輪出場を決めたいです。〝お家芸〟といわれる日本女子レスリング界のためにも、私だけでなく5年後までには「世代交代」が必要と考えています。

 5歳の頃、ブラジリアン柔術をしていた父に勧められてレスリングを始めました。道場も2カ所通い、最初は正直、好きではありませんでした。友達からも「レスリングって何?」とも言われましたが、今では「東京五輪で金メダル」という大きな目標ができ、父には感謝しています。(2015年8月5日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。