<12年ロンドン五輪柔道女子78キロ超級銀メダリスト コマツ柔道部コーチ 杉本 美香さん(31)>

 いま私が取り組んでいること、それは「日本一周柔道教室の旅」です。現役中から応援してくれた人に恩返しをしたいと考えていて、12年の五輪後に引退してから始めました。実際に動きだしてみて、いま思うのは柔道を広めたい、良い部分をもっと知ってもらいたいということ。そして、いつの間にか全国制覇が目標に。これまで47のうち回ったのは28都道府県。年始にも京都に行きました。

 20年東京五輪では発祥国である柔道の注目は自然と高まると思いますが、いま柔道へのイメージはマイナスなことが多いですね。体罰問題や危険事故などもありました。競技人口も減っています。柔道家としては悲しいですが、それを変えていきたいんです。

 私が通った大阪市立汎愛高には、日本で唯一の武道科がありました。礼儀から入りさまざまなことを学びました。ただ勝つだけではなく、相手を思いやる気持ちの重要さ。よく試合が終わってガッツポーズをする選手もいますが、相手がいることを考えれば慎むべきと習いました。相手の立場に立つということが「武道」では重要です。

 柔道も五輪種目になり、横文字の「JUDO」が世界に広がっています。武道的側面は消えていっていて仕方がないという方もいますが、どこか心の隅で漢字の「柔道」を選手が持っていてほしい。教室で教えるのも、同じ部分です。組み合う前に礼をしない時など、ちゃんと言いますよ。「受けてもらった感謝をちゃんとしよう」とか。数時間の触れあいだからこそ響くこともあるかなと。

 ただし、ただ真面目なだけでは面白くないですよね。私は(関西出身の)こんなキャラですから、笑いや、パフォーマンスがあった方が興味を持ってくれると思って、しっかりウケも狙うようにしてます。子供たちがシ~ンとしている時もありますが…。

 「全国達成」は自己満足かもしれないですけど、世間からの柔道という目も変わってくれればいいと思っています。ブログ(http://ameblo.jp/mika-sugimoto/)のコメントでもいいので、全国の皆さま、ぜひお声がけ下さい!

(2016年1月27日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。