<84年ロサンゼルス五輪 体操男子個人総合、種目別つり輪金 日体大学長 具志堅幸司(60)>

 忙しいですね(笑い)。この1日に学長になって、やはり副学長の時とは違います。やることは多いし、責任もある。金メダリストで(4年制)大学の学長というのは、初めてらしいですね。意外な感じでした。ただ、東京五輪・パラリンピックがなかったら(学長就任の)声はかからなかったでしょうから。自分でもやらなかったと思います。体育大学として、やることは多いし、やらなければいけないと思っています。

 2020年には五輪とパラリンピックに合わせて70人の選手を出すことを目標にしています。ロンドンが23人、リオが32人ですから倍以上。簡単ではないけれど、不可能ではない。大会には選手だけではなく、学生全員に関わってほしい。いろいろな形で大会をサポートし、応援してもらいたい。それが、3年後へ期待する一番大きなものです。

 私自身も、多くの競技を見たいですね。今までは選手として、指導者として、そして協会の役員として体操で生きてきたけれど、今度は日体大の学長として他の競技に顔を出し、選手に声をかけたい。もっとも、保護者より上の世代なので「どこのおっさんが来たんだ」と思われるかもしれないけれど(笑い)。

 入学式でも話したのですが、大学は出会いの場でもある。私は2回、選手生命も危うくなる大ケガをしています。支えてくれたのは仲間であり、先輩、恩師でした。この大学に来て本当に良かったと思いました。学生には、そういう人間関係も大切にしてほしい。

 大学の将来像も考えていかないと。18歳人口が減少していく中で、どう生き残り、輝き続けるか。今、日体大は学部増で大規模大学になろうとしています。学部が増えると教育の質が落ちるともいわれますが、それを維持し、上げていかないと。日体大は今「スポーツ」「身体」「生命」をキーワードとして「身体にまつわる文化と科学の総合大学」へと変貌を遂げようとしています。先生たちも含めて、大きな意識改革が必要な時期でもあります。

 日体大が目指すのは、スポーツ文化の振興です。決してトップアスリートだけの大学ではない。五輪でいい成績をあげる「メダル大国」になることも重要ですが、本当に大切なのは「スポーツ大国」になること。ドイツのように総合型スポーツクラブを充実させ、誰でもスポーツを楽しめるようになればいい。それには指導者など支える人間が必要なんです。そのためにも日体大が果たすべき役割は大きいと思っています。


(2017年4月12日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。