<98~01埼玉県代表 国体山岳競技V4 日本山岳・スポーツクライミング協会競技部所属 佐藤豊審判員(50)>

 スポーツクライミングが五輪の追加競技に決まり、本当に感慨深いです。私がクライミングに夢中になったのは17歳でした。埼玉県内の岩場に、ハーネスと、運動靴と、そして工事現場で使われる黄色と黒の通称トラロープで友達と勇んで出かけました。何の知識もないし、誰にも聞けないから、そんな装備で何とかなるかな、そういう気持ちでした。

 すると、その岩場の主のような地元のおじいちゃんがいて、私たちの装備を見るなり説教です。岩場の前に正座させられて、ずっとロッククライミングの心得を説かれたことを覚えています。それが、私とクライミングの最初の出合いでした。そこから、クライミング用のロープを学校と交渉して買ってもらい、山岳部として活動できるよう、少しずつ装備も知識も増やしていきました。

 それが、今は五輪で実施されることも決まり、先日の八王子で行われたボルダリングのW杯でもチケットが完売するほどのお客さんが見に来てくれるようになりました。私が選手として国内の大会に出ていた時は、まだのどかな感じでしたが、今や会場内もピリピリするような緊張感の中で競技が行われています。

 私は協会の技術委員会に所属しており、時には海外の国際大会へコーチとして同行することもあります。今は審判員を務めており、東京五輪では審判員としてクライミング界のために貢献できればと考えています。そのためには、国際スポーツクライミング連盟(IFSC)ジャッジの資格を取らないとなりません。過去に日本人は1人しかいませんが、そこに挑戦しようと思っています。だから、英語が必須なんです。競技中に興奮して英語でまくしたてる選手に、冷静に対応しないとならない。難しい役目ですが、やりがいを感じてトライしようと考えています。

(2017年8月9日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。