兄(競輪選手、志村太賀)の影響で物心ついた時から空手を習っていました。空手には相手と戦う「組手」と技を見せる「形」がありますが、僕は組手で駒大3年時にインカレ2位、4年時には世界学生選手権(ポーランド)3位までいきました。一番の魅力は、練習で負けている相手でも本番で勝てたり、その逆があったりするところでしょうか。

空手が五輪種目に決まった時、メジャーになる最高のきっかけがやってきたと思いました。ただその一方で「これからはさらに空手が変わっていくのかな」とも思いました。というのは、日本の空手は礼に始まり礼に終わる。その根底には相手を思いやる気持ち、優しさが流れている。ところが、外国人はポイントを取れば派手なガッツポーズだし、痛くもないのに痛いふりをして相手の反則を誘ったりもする。

一撃必殺だった昔はともかく、空手の根本は、当たるか当たらないかというところに打ち込むテクニックと、相手に対する礼儀。僕も前歯2本を折ったり左肩脱臼などをしていますが、お互い未熟で突きや蹴りが当たってしまうこともある。その痛みが分かるからこそ、相手を思いやる気持ちが育まれる。僕はそんな空手が好きなのですが…。

とはいえ悲願の五輪種目に決まったことはうれしい。組手では、今、日本で一番強いと思われる荒賀龍太郎君や西村拳君、形では男子の喜友名諒君や女子の清水希容さんは期待大。メダルは間違いないと思いますが、彼らにしてみれば金でなければ納得できないはず。それぐらいのレベルです。

組手ではポイントを取りに行くときの技の速さや蹴りの多彩さを見てほしい。形はフィギュアスケートのような一面があって、高い表現力や独特の雰囲気を感じてほしい。技のスピード、切れなどはもちろん、目力にもぜひ注目ですね。

試合前の緊張感は競輪のレース前と同じ。入り口は狭いけど、いざ足を踏み入れてみれば魅力にあふれているところも似ているかな。あまり知られていないけど、空手には投げ技もあるんですよ。ぜひ東京五輪で注目され、空手人口が増えるとうれしいですね。

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