小さいころからソフトボールをやっていて当時はまだ五輪種目ではありませんでした。日本に来て96年アトランタ五輪から正式種目になりましたが、選出されず悔しくてあまり見ることができませんでした。シドニー五輪で初めて出場しましたが、勝てば笑う、負ければ泣く、他のどんな大会よりも緊張や興奮したのを覚えています。注目度も高く、ソフトボールを知らない国にも伝わることが素晴らしい。ホームランを打てば、世界中のたくさんの人に見られているんだと思うとすごく力になりました。

大会中はシンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング)や野球の選手が、会場や宿舎に来てくれました。シンクロ日本代表の井村ヘッドコーチとは、その後何度か対談もさせていただきました。城島選手(元ソフトバンク)や井口選手(現ロッテ監督)など、日本のスターを間近に見て、この場所は偉大な場所なんだと実感しました。

北京五輪で金メダルに貢献した上野由岐子は、日本代表にとって絶対的な存在です。彼女のように身体能力が高く器用で何でもできる選手はなかなかいないので、若い選手たちは相当練習しないと世界では戦えない。そのため苦労しても上手になりたいと思う選手を代表に選出しています。

トップの選手が集まる五輪ってどんな大会だろうって聞かれるんですけど、自分を試す大会だと思います。人生で一番緊張する場面で実力を発揮できれば、最高の成績を出せなくても「スポーツをやってきて良かった」と満足できる大会ではないでしょうか。私自身も五輪の経験があるからこそ、死ぬまでソフトボールに携わりたいと思って頑張ってきました。あと500日を切った中で、その経験や思いを若い選手に伝えていきます。東京五輪で金メダル-。これは「賭けごと」。金メダル獲得へ勝負師として賭けるために私はここにいると思っています。

(244人目)