<陸上男子110メートル障害 高山峻野(ゼンリン=25)>

東京オリンピック(五輪)が近づいているというのは意識しないです。性分ですかね? もちろん出られたら、うれしいですが、そこを目指すのではなく、まず本当に目の前のことをクリアしていくことに重点を置いています。今の目標は小さなことです。シーズンで2キロ落ち、74キロになった体重を筋力ベースで戻して、パワーを上げることになります。

発言は控えめと言われます。それも目の前のことを精いっぱいやりたいだけなのかもしれません。人間は目標の80%ぐらいしか達成できないことが多いと僕は思います。大きな目標は完璧を求めてしまうと、どこかにほころびが出てしまう。でも目の前の小さな目標ならば、100%を達成できる。それを少しずつ積み重ねていけば、いつの間にか大きな目標だって100%を超えられるようになるのかなと。多分ですけど。

5台目のハードルの踏み切りまで先頭だった世界選手権の準決勝は、ウオーミングアップから、今までにないスピードが出ていました。周囲には言わなかったですけど、実は『行けるぞ』と思ってました。男子110メートル障害で日本人初の決勝まで進めるチャンスは本当にあったと思います。実際に2台目から3台目まではインターバルベストが出ていました。さらにスピードを上げると、5台目のハードルで踏み切り位置が近く、足をさばききれず、ぶつけてしまいました。結果的に失敗でしたが、今までにないスピードを体感でき、気持ちの部分でも、攻めのレースができました。いい感覚を得られた意味で、すごく大きな大会になりました。

今季は東京五輪の参加標準記録を上回り、13秒25の日本新記録も出ました。実績ができて、楽な気持ちでレースに臨めるようになりました。でも、アスリートは好調だった次のシーズンはダメになってしまうことも多々あります。僕は来年、無理ですね(笑い)。世界選手権準決勝の時のようなピークを五輪に合わせるのは難しいですよね…。でも、やれることはやります。ピーキングの力を感覚的につかめればいいですね。まずは目の前のことをクリアしていきたいです。(278人目)