6月から競技場が使えるようになりました。自粛期間中は人との接触を極力、避け、坂道を走っていました。やっぱり競技場を全力で走るのは気持ちいいですね。

バトンを持ち笑顔の野沢啓佑
バトンを持ち笑顔の野沢啓佑

新型コロナウイルスの話題が出始めた時はまさか、ここまで影響が大きくなるとは思いませんでした。本音を言えば、東京オリンピック(五輪)が延期となって、ラッキーだと思う部分も少しあります。もちろん、今年の夏に合わせて勝負の準備は進めていましたが、6月に予定されていた日本選手権で100%の力を出せて、五輪の切符を獲得できるイメージはちょっと湧いていなかったのも事実でした。リオデジャネイロ五輪以降、両足の足底の故障が続き、けがが再発してしまうのではないか、という不安がありました。冬季に100%追い込めてなかった部分が多々あり、それが動きにも出てしまっていました。

それがコロナの期間に坂を多く走ったおかげか、体のケア、体作りをしっかりできたからか、足底の痛みはあまり出なくなりました。自分の弱さに向き合えて、体が変わり、すごくよくなりました。

シーズンの世界ランク6位を出して挑んだ16年リオデジャネイロ五輪の予選は、ワクワクして走りました。48秒62の自己記録も出ました。ただ、準決勝は予選と空気感が違いました。予選前はハイタッチとか笑顔のあいさつをしていましたが、準決勝前はどの選手も、自分の世界に入っていました。今振り返れば、その雰囲気にのまれたのだと感じます。レースプランと違い、周りを見ずに突っ込んでしまいました。9台目のハードルまでは決勝へ進出できる2着でしたが、最後の10台目に足もぶつけて、失速しました。どんな状況であれ、粘らないといけない。弱さが出てしまいました。

選手である以上は、世の中を明るくできる存在になりたいです。嫌な気持ちを一瞬でも忘れられるニュースを届けることが一番だと思います。そのためには結果を出すことが絶対。男子400メートル障害に関しては、まだ日本人で五輪の決勝に進んだ人はいません。東京五輪で初のファイナリストになるため、1日1日を大切に練習していきます。(306人目)