東京オリンピック(五輪)がある今シーズンを最後に競技は引退し、歯科医師となる道に進むと決めています。今季は13秒16の男子110メートル障害の日本記録(当時)を出すなど結果も付いてきていますが、その意志は固いです。もちろん、これまで出場してきた大会や合宿は、もう2度とないのかと思うと、さみしさもこみ上げてきます。ただ、もう次はないとの気持ちで、区切りを決めるからこそ、今があると思っています。やり残したことのないよう1日、1日に全力を尽くしています。

多くの方から「もっと続けたら」といった声もかけていただいたこともあり、自分なりに深く考えました。ただ、ハードルは突き詰めた先にも、結局、終わりはないと思います。修正しても、新しい改善点が生まれる。本当の完成形を作りあげた選手は多分いないのではないかとも感じます。もともと、父が歯科医師だったこともあり、医療従事者になりたい思いが強く、時間を限ることで、より完成に近い形を作り、次の道へと進もうと心に決めました。

東京で五輪が行われることが決まった時は高校(函館ラ・サール)3年の秋でした。当時の僕は正直、五輪に出られるレベルの選手になるとは、想像できないレベルでした。なので、五輪を目指そうという気持ちはなく、1人のファンとして外から見るんだろうなという感情だったかと思います。実際に出場できるかもしれないと意識し始めたのは2016年頃ですかね。

つい5、6年前まで男子110メートル障害は「世界から遠い種目」ともいわれていました。しかし、現在は国内の選手が競うように記録を伸ばしています。高め合い、刺激し合って、みんなで世界と戦う雰囲気があります。五輪へ向けても、より気持ちを引き締めて、練習に取り組めています。

東京五輪の目標は、まだ日本人が立ったことのない決勝へと進むことです。準決勝で、どれだけ自分の走りに集中できるか、イメージ通りに走れるかがポイントです。競技生活が少なくなってくる中、今まで自分が思っていた以上に、応援してくださっている方や、気にしてくださっている方がたくさんいるんだとも感じています。まずは走りで結果を出し、恩返しをしたいと思います。(356人目)