日本水泳連盟の副会長兼専務理事の金子日出澄氏が15日、水泳の選手団団長を務めたパリ五輪(オリンピック)を総括した。
水泳全体では5競技のうち競泳男子400メートル個人メドレーの松下知之(19=東洋大)と、飛び込みで男子高飛び込みの玉井陸斗(17=JSS宝塚)が銀メダルを獲得。その功績を評価した上で、課題も挙げた。
総括全文は以下の通り。
まずは東京五輪以降、三年間のたゆまぬ努力と五輪日本代表として水泳ニッポンを背負って全力で戦い続けてきた全ての選手に心からの敬意を表する。
水泳5種別(競泳、飛び込み、水球、AS、OWS)とも、各目標に対しての結果は明暗を分け、選手・コーチの思いはさまざまであるとは思うが、今回獲得された銀メダル2つは、競泳18歳の松下知之選手、飛び込み17歳の玉井陸斗選手と若手選手の台頭があり、次の2028ロス五輪に向けても希望の持てる成果であった。
水泳の競技結果については、既に報道でも諸説展開されているが、ここ20年来メダル常勝種目であった競泳、ASが苦戦した一方で、飛び込みが約100年越しで初の五輪メダルを獲得し、強豪中国の牙城を崩す勢いであった事。水球は決勝リーグにこそ届かなかったものの強豪国に劣らぬ試合内容が多く、世界で戦うチームとしての顕著な実力向上が見られた事。そしてOWSも、女子10キロでは序盤から上位をキープし、ラスト60メートルのコース取り判断ミスで惜しくも入賞は逃したものの、五輪入賞の可能性を大きく躍進させた事。こうした結果を受け、各種別の強化事業が着実に成果を結んでいる一面も大きく評価したい。
今回苦戦を強いられた競泳について補足すると、金メダルを含む複数メダルの獲得目標には及ばなかったが、リレーを含めれば16名、約6割の選手が決勝レースを泳ぐ事ができた。五輪決勝という世界最高峰レースの大歓声を受け、まさに「オリンピック」という雰囲気の中で泳げたことは、何にも代え難い経験と価値であると思う。
さらに、大ベテランの鈴木聡美選手の200メートル平泳ぎ4位入賞と女子メドレーリレー100メートル平泳ぎベストタイム(未公認)更新は、競泳選手の可能性と展望を大きく広げたし、初出場の高校生含む若手選手たちの入賞は2028ロサンゼルス五輪につながる成果である。
今回の課題は、3月選考会タイムを超えられなかった種目が多数あった事である。選考会後4カ月間の日本代表合宿を経て、選手の競技力が低下する事は考えられない。では何が足りなかったのか、今後の強化事業を組み立てる上でこの事の検証は必須である。
また、ASについてはチーム5位、デュエット8位と入賞は果たしたものの、選手たちはメダルを逃した悔しさはあると思う。昨年のAS採点ルールの変更から約1年、今回五輪のメダル獲得国には旧ルール下での序列を崩すかたちでイギリス、オランダ、アメリカが加わり、AS競技に求められる要素が大きく変わってきたことを物語る。新ルールに基づいた戦略・強化対策に苦心しながらも最大努力を重ね、五輪の舞台で正々堂々と演技を披露し泳ぎ切ったマーメイドJAPANには心からの賛辞を贈る。
ここを新たなスタートとして、従来の日本ASチームの強みを生かしつつ、新基準での戦いに必要な要素をさらに向上させるべく、チャレンジ精神をもって強化にあたってもらいたい。
結びに、選手団強化現場において尽力頂いた総監督以下、監督、コーチ、ドクター、トレーナー、スタッフ各位に心からの慰労と感謝を申し上げる。
パリ五輪水泳選手団団長 金子日出澄



