韓国の氷上女帝が、日本のエースに負けた。オリンピック3連覇を狙った李相花(イ・サンファ=28)が、スピードスケート女子500メートルで小平奈緒(31)に続く2位で、銀メダルを獲得した。いくら世界2位になったとしても、日本人に負けて取った銀メダルは、評価されないことが多かった。

優勝した小平(右)は2位の李相花と健闘をたたえ合い抱き合う(撮影・河野匠)
優勝した小平(右)は2位の李相花と健闘をたたえ合い抱き合う(撮影・河野匠)

 これは日本でも言えることだ。92年バルセロナ五輪で森下広一が男子マラソンで銀メダルを取った。しかし、優勝した選手は韓国人の黄永祚(ファン・ヨンジョ)。実際に、同五輪女子マラソンで銀メダルの有森裕子より、評価や注目度は低かった。12年ロンドン五輪で、男子サッカーはベスト4に入った。メダルは取れなかったが、68年メキシコ五輪(銅メダル)以来の立派な成績だ。しかし3位決定戦で韓国に0-2で負けたことで、森下同様、その結果より日本国内の評価は低かったように思える。

 スポーツの世界で、日韓は永遠のライバルという。過去の歴史問題などがあり、競技場ではお互いのプライド、国民の期待を背に戦う。以前、サッカー韓国代表DF洪明甫(ホン・ミョンボ)主将は「できれば、日本戦はやりたくない。周りの期待が高すぎて、負けた時の心の傷があまりにも深い」と話したことがあるほどだ。

 しかし今回、銀メダルの李相花はほとんど批判されなかった。むしろ韓国国内では「3大会もよく頑張ってくれた」の声が多かった。優勝した小平を誹謗(ひぼう)中傷することもなく、アスリート2人の今までの友情物語が、温かいエピソードとして広まった。時代が変わったのか?

 そうではない。開幕前、小池百合子都知事の「平壌(ピョンヤン)オリンピック発言」。安倍晋三首相の政治的発言、さらに開会式でホームチームの入場行進時にほとんどの国の指導者が起立して拍手を送るが、なぜか安倍首相と米ペンス副大統領だけ座ったままで選手団を迎えたことなどで、日本に対する感情はよくなかった。

演技を終えた後、ポーズを決める羽生結弦の頭上を飛ぶプーさんのぬいぐるみ(撮影・村上幸将)
演技を終えた後、ポーズを決める羽生結弦の頭上を飛ぶプーさんのぬいぐるみ(撮影・村上幸将)

 政治的な溝を埋めたのは、アスリートたちだ。金メダルが取れなくて泣き崩れる李相花のもとに寄り添って肩を抱いてくれた小平の行動が、フィギュアスケート男子で、リンクに投げ込まれた無数の「くまのプーさん」ぬいぐるみを、現地の子供たちに送るとコメントした羽生結弦の気持ちが、韓国国民の心に響いた。やはりスポーツの力は、純粋で偉大だった。【盧載鎭】