大会6日目まででメダル7個、日本勢の活躍が続いている。7日目は小休止だったが、このペースでいけば冬季五輪最多だった98年長野の10個を軽く抜き、20個を超える? そんな妄想を抱かせるほど。過去にないほどの盛り上がりだ。

 もっとも「金メダルじゃないの?」という思いはある。スピードスケートの小平は世界記録を持つ1000メートルで銀、ノルディック複合の渡部暁も今季W杯総合ランク1位だったが銀…。優勝候補たちの首にかかったメダルの色は思いと違った。

 選手たちは「悔しい」と言うが、それでもメダル獲得は素晴らしい。天候の影響を受けやすく、波乱も起きやすいのが冬季五輪。予想通りになることは少なく「世界記録保持者は勝てない」「W杯の成績は関係ない」のは「常識」でさえある。今大会も、メダルに届かない金メダル候補は少なくないし、男子モーグルの原のように予想外の選手が表彰台に立つこともある。それが雪と氷の五輪だ。

 金メダルこそないが、メダルラッシュは中盤戦、後半戦に向けて日本チームに弾みをつける。夏冬関係なく、近年の五輪は「チーム感」が強い。1つの競技で好成績を残せば、他の競技も盛り上がる。メダルラッシュは「チームで戦う」日本の推進力になる。

 12年ロンドン五輪は「金メダル17個」と選手団が目標をぶち上げたが、大会が始まると連戦連敗。柔道や競泳で期待された金メダルを逃し続けた。チームのムードが悪くなった時、選手団は目標を「メダル数」に切り替えた。選手団本部役員のアイデアだというが、これで日本は勢いを取り戻し、メダル総数過去最多の38を獲得した。大勝ムードはその後の東京五輪招致にも影響した。金は目標の半分以下、7個だったが。

 「金メダルが取れない危機感」を「メダルが取れている勢い」が上回れば、今後の選手たちも楽になる。「金を取らなければ」というプレッシャーはなくなり「勢いに乗ろう」とポジティブに競技できる。期待のフィギュアスケート個人戦も始まる。楽しみな競技も多い。テレビを離れられない日々は、まだまだ続く。【荻島弘一】