フィギュアスケート男子の羽生結弦(23=ANA)が「100%」でオリンピック(五輪)の舞台に戻ってくる。カナダ・トロントで羽生を指導するブライアン・オーサー・コーチ(56)が6日、五輪会場の江陵アイスアリーナで取材に応じ、昨年11月に痛めた羽生の右足首が既に治り、3種類の4回転ジャンプを跳んでいることを明かした。さらに「見くびってもらっては困る」と、周囲の不安を打ち消した。11日に韓国入りし、男子66年ぶりの連覇がかかる個人戦に挑む。

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 午前11時過ぎ、フィギュアスケート会場の江陵アイスアリーナが熱気に包まれた。羽生を指導しているオーサー・コーチが取材エリアに姿を見せると、メディアがいっせいに群がった。現状が明かされていない羽生について包み隠さず、笑顔で語り始めた。

 「日々、状態が良くなっている。私たちはこれからどう調整するか、何を目指すか、しっかりした考えがある」。昨年11月9日に右足首靱帯(じんたい)を痛め、氷上で本格的な練習を再開したのは今年1月上旬から。それから1カ月弱。既に羽生は4回転ジャンプを跳び、今は試合に向け、スタミナを取り戻すトレーニングを積んでいるという。連覇がかかる16日からの個人戦までには「100%になる」と太鼓判を押した。また、11日に練習拠点のカナダ・トロントから現地入りすることも明らかにした。

 「彼を見くびっては困る」と言い切った。本来の力を出せば、金メダルは確実。そう言えるだけの自信と裏付けがある。まず第一に、短期間での調整がうまいこと。この日、オーサー氏は、昨夏の例を挙げた。「8月のトレーニングの頃を覚えているかな。7月に練習を始め、8月にはもうシーズンの準備が出来ていた」。このままのペースでいけば、16、17日の個人戦に間に合うと計算は立っている。

 勝負の1つのポイントとなる4回転ジャンプについては、高難度の4回転ルッツは「準備が出来ていない」と封印するが、同ループ、サルコー、トーループの3種類は問題ないという。羽生は、2季前のグランプリ(GP)ファイナルでトーループ、サルコーの4回転2種類3本の構成で当時のフリー世界最高点をマーク。昨季の世界選手権では、同ループを加えた3種4本で、223・20点と最高点を更新した。

 今シーズン当初、オーサー・コーチはこう話していた。「ジャンプは1つの要素にすぎない。羽生は他のすべての要素で勝っている」。たとえ4回転ルッツを封印したとしても、技術、経験の裏付けから、五輪連覇は十分狙える。あとは「100%」の羽生を待つだけだ。