「私には失敗する権利がなかった」。国家ぐるみのドーピング問題により個人資格で平昌冬季五輪(ピョンチャンオリンピック)に出場している「ロシアからの五輪選手(OAR)」に23日、待望の初の金メダルをもたらしたのは15歳の少女だった。フィギュアスケート女子のアリーナ・ザギトワ選手は優勝を決めた後、重圧を感じていた胸の内を明らかにした。

 自国開催だった前回ソチ五輪では金13個を含むメダル計33個(後に11個の剥奪が決定)を獲得したが、今回は終盤を迎えても金ゼロだった。ドーピング問題で有力選手が出場資格を得られず「ロシアはドーピングなしではこんなもの」との言葉も飛んだ。

 そんな中で、スポーツ大国を自任する母国の期待を一身に受けたのがフィギュア女子。21日のショートプログラムを1位で通過したザギトワ選手と2位だった18歳のエフゲニア・メドベージェワ選手の両肩には見えない圧力がかかっていた。

 「うれしいと同時に、心の中が空っぽになったようだった」。ザギトワ選手は優勝したと知ったときの気持ちをこう表現した。23日のフリーに臨む前は硬い表情。「緊張していた」という。「責任を感じた」とも振り返った15歳の表情は安堵(あんど)感の方が強かった。