憧れの舞台で力を出した。男子で世界選手権2冠の堀島行真(20=中京大)が80・35点の日本人トップとなる全体5位で通過。トップ10に入り、予選2回目を免除され、12日の決勝進出を決めた。得意とするエアの難度は落としながら、その実力を示した。

 スタート台から見下ろす大歓声、独特の緊張感がたまらなかった。5番目で出番を迎えた堀島は試合直前の公式練習から「自分の感じではなかった」と硬さがあった。それでも予選通過するには十分。公式練習後、普段はあまりない整備が入り、きれいになった雪面も味方に力強く攻める。第2エアの手前でターンが乱れたが、耐えた。タイムは出場30人中2位の23秒95。決勝へ駒を進めた。「80点は『低いな』という印象」としながら「10位以内に残るのが大事」と話した。

 決勝は伸びしろを残す。予選は確実性重視で、エアの難度を下げた。「フルツイスト(伸身後方1回宙返り1回ひねり)」と「コーク720(軸をずらした2回転)」を選択。今後は「ダブルフルツイスト(同2回ひねり)」と「コーク1080(同3回転)」と世界最高難度のエアで挑む予定だ。首位通過のW杯種目別総合6連覇ミカエル・キングズベリー(カナダ)とは約6点差。「自分以外の人の思いも力に変える。自分のできることをしっかり考えてやりたい」と誓った。

 五輪は憧れの舞台だった。岐阜・池田小時代のPTA新聞には将来の夢として「オリンピックにでることです」と記した。当時、夏休みは池田町の自宅から三重・桑名市のウオータージャンプ場まで毎日、父行訓さん(57)と通い、武器となるエアを磨いた。父が忙しい時は往復100キロ、自転車をこいだ。撮影してもらったビデオと写真を見て付けたのが「ウオータージャンプ日記」。修正点の追求を毎日繰り返す。それが五輪への道しるべとなった。

 中京大卒業後のビジョンも持っている。堀島は「プロになりたいと思う。五輪次第で、この後の人生も変わっていく。金メダルを取れば、選択の幅も広がる。体が動くうちは、そんな風に生きていけたら幸せ」と話す。岐阜第一高を卒業後も考えていた道だが、当時は実績がなく、けがしたら退路がないと家族の反対もあり、進学を選択した。幼少期に思い描いていた五輪の夢はかなえた。今は金メダル-。それが次のステージの青写真だ。【上田悠太】