14年ソチ五輪に続く2度目の出場となった伊藤有希(23=土屋ホーム)は、9位に終わった。1、2回目ともに追い風の不利な条件で、1回目が94メートル、2回目が93メートルで、合計203・9点で、ソチの7位に続く入賞はならなかった。「この4年間、私は本当にいろんな人に支えてもらって来た。その人たちの喜ぶ顔が見たくてここに来たが、それができなくてすごく残念」と、涙がこぼれた。

 「葛西色」に染まり進化した。北海道・下川商3年だった13年にレジェンド葛西から「一緒に世界一になろう」と誘われ土屋ホームに入社した。男子のいる練習環境を求めてきただけに最高の環境が用意された。葛西の一挙手一投足を目に焼き付け、ジャンプの空中姿勢も両手の手のひらを下に向けるムササビ・ジャンプを取り入れた。遠征で葛西が自宅に不在でも怜奈夫人を訪ねるなど葛西家に入り浸るほど葛西に染まっている。

 その社会人1年目だった14年ソチ五輪。大会後、高梨と抱き合いながら「またここに戻ってこよう」と涙で話し、4年間、戦ってきた。頭角を現わしてきたのは昨季。それまで、未勝利だったW杯で5勝を挙げ、個人総合でも2位と高梨に迫った。元祖スーパー小学生として脚光を浴びてからしばらく低迷したが、腐らず練習を重ね復活してみせた。「平昌を目標にやってきた」と口癖のように話してきた。

 だから、ソチより順位を下げた今回は「4年前より悔しい」。それでも、高梨が飛んだ後、真っ先に駆け寄って抱きしめた。「本当におめでとうと言って。4年前、沙羅ちゃんもすごい苦しい思いをして。それを見てきたので、メダルを取れてすごく良かった」。自分の悔しさを押し殺し、ともに歩んできた高梨のメダルを喜んだところに、伊藤の優しさがにじんでいた。