中長距離のエース高木美帆(23=日体大助手)が悲願の銀メダルを獲得した。

 最終14組に登場し、世界記録保持者ヘザー・ベルフスマ(米国)と同走して1分54秒55をマーク。今季のワールドカップ(W杯)では4戦4勝を誇った得意種目で、日本人女子の個人種目では競技史上最高の銀メダルを手にした。「この日だけが特別ではなくて、ソチが始まる前からいろいろな方に応援、支えてもらっていたので、いろんなこみ上げてくる気持ちはありました」と感謝。「でも、自分のなかで最高順位を取れたのは誇りに思えることなので、ここまでくることできたのは自信をもっていきたいと思いますし、大会は終わってないので、1000とパシュートでは今以上のレースが出来るように準備していきたい」とさらなる快挙のために、しっかり次を見据えた。

 10年バンクーバー五輪に国内史上最年少の15歳で出場し、「スーパー中学生」として注目を浴びたが、期待された14年ソチ五輪は代表選考会でまさかの落選。五輪に100%をかけきれていなかったことを痛感し、「気持ちの差が行動に表れていた。レース一本に対する思いが五輪にかけてきた人たちとは違った」と、23歳で迎える平昌五輪での巻き返しを誓った。

 メダル0に終わったソチ五輪後、日本スケート連盟が主導し、各企業、大学に所属するトップ選手を集めたナショナルチームが発足。ヨハン・デビット・コーチ(オランダ)の指導のもと、高木もその中で滑りを磨いた。

 オランダ流の自転車を使った夏場の猛練習で「1歩の押し出す力が上がった」と成長を実感。16年シーズンにW杯初優勝を果たすと、今季は1000メートルで2位に3度、最も得意とする1500メートルは4戦全勝、3000メートルも昨年12月に日本人初優勝を飾るなど、世界屈指のオールラウンダーへと成長した。

 平昌五輪代表に正式決定すると、決意を語る言葉には力がこもった。

 高木美 8年前、4年前の悔しさ、雪辱は五輪の舞台での結果でしか自分の中でははらせないと思っている。ここからが始まり。あらためて目の前に五輪が迫ってきて、やっと特別に思う覚悟もできてきたのかなと思う。

 戻ってきた2度目の五輪。プレッシャーのかかる最初の3000メートルは低地での自己ベストを更新する4分1秒35をマークするも、表彰台はならず5位。それでも、今季4戦全勝と最も得意とする1500メートルに向け、「このレース結果を無駄にしない」と巻き返しに自信を見せてきた。

 スピードスケートの日本勢女子のメダルは98年長野五輪500メートルで銅メダルを獲得した岡崎朋美以来、20年ぶり。14日にはメダルが期待される1000メートル、21日には世界記録を持つ団体追い抜きも控えており、複数メダルの期待も高まる。

 日本のエースが、「譲れない」と語る得意の距離で意地の滑りを見せつけた。