スピードスケート短距離のエース小平奈緒(31=相沢病院)が36秒94の五輪新記録で金メダルを獲得した。「(この4年間)過去のことは考えないようにしたこともあったけれど、すべて報われたような気持ちです」と目を少し潤ませた。

 「誰も見たことがない世界を感じたい」。ずっとスピードを追い求めてきた。メダルを逃した14年ソチ五輪後、2年間のオランダ留学で滑りと心を磨き、16年春に帰国。3度目の五輪に向け、結城コーチと「22カ月計画」をたてた。平昌五輪までを1つのシーズンと考え、まず取りかかったのが、体のメンテナンスだった。留学時代のかたよった食事などによる体調不良や、右足首の故障の影響で体力が低下しているのを痛感していた。

 体が戻ると、技術面に着手した。コーナーワークを磨くため、ショートトラックのリンクでの練習量を増やし、細部の感覚を意識した。さらに、男子選手との滑る量を増やし、スピード感を体に覚え込ませた。100メートルの通過タイムが上がったことで、全体のスピードも上がった。最も得意とする500メートルでは、16年シーズンにW杯で無傷の8連勝を飾り、同シーズンの世界距離別選手権でも優勝。世界スプリント選手権では日本女子初の総合優勝も果たし、破竹の勢いで世界の頂点へとかけあがった。

 迎えた、五輪イヤーの今季。目指してきたのは「1%の上積み」だ。連勝街道を支えた筋力、持久力など、すべてにおいて前シーズンからのレベルアップを意識。タイムでは自己ベスト36秒75から1%縮めた先にある世界記録を念頭に、体をいじめ抜いてきた。

 3度目の大舞台。1000メートルでは0秒26差で金メダルは逃したが、個人種目初となる銀メダルを獲得。開幕前に掲げた、「1500メートルで入賞、1000メートルで表彰台」という500メートルで金メダルへのシナリオ通りの結果を残し、24連勝中の主戦場でのレースを迎えた。