最後までベールに包まれたまま運命の決戦を迎える。陸上の東京五輪代表の最終選考を兼ねた日本選手権(大阪・ヤンマースタジアム長居)が24日から開幕する。

9秒98の自己ベストを持つ桐生祥秀(25=日本生命)は万全な準備ができなかった中で、最善の結果を追求する。

5月下旬に出た右アキレス腱(けん)の痛みについて「完全には治っていない」と明かした。追い風2・6メートルの参考記録ながら、予選で10秒01を出した6日の布勢スプリント以降は「ほぼほぼ練習、走り込みはできていない状態。痛みを取ることを最優先にやってきた」。東京五輪の切符を巡る、絶対に外せない戦いを前に試練が訪れた。

たしかに思い描いた調整をできたとは言えない。過去には勝負どころで弱いとも言われた。しかし、どんな状況でも前向きに捉え、安定したメンタルを保って、成績を残せるようになったのが、近年の成長だった。「走りに関しては技術が上がっている。アベレージだったり、どんな状況でも同じようなタイムで走れる」。経験に裏打ちされた自信がある。練習から試合へのスイッチとなる緊張感も大事にして、スタートラインに立つ。前回覇者は「緊張して予選を走って、そこから準決勝、決勝がある。しっかりと結果を残していきたい」。この苦難をしのぎ、成長の材料とする。そしてもっと強くなる。

◆男子100メートル東京五輪代表選考 代表枠は最大3。19年5月~20年4月5日、20年12月1日から21年6月29日の期間に、参加標準記録(10秒05)を突破するか、世界ランキングで出場資格を満たすことが条件。その上で、日本選手権3位以内に入れば代表。それで3枠が埋まらない場合は、日本選手権の結果、世界ランキングの上位などの要素から選ぶ。