元日本記録保持者の桐生祥秀(25=日本生命)は、1度も先頭争いに絡むことなく10秒28の5位でレースを終えた。スタートのリアクションタイムは決勝8人中2番目に遅い0秒152。隣のレーンから、最速0秒123の好スタートを決めた多田との差は最後まで縮まらなかった。

結果的に4位で代表権を決定的とした得た小池との差は0秒01差。日本人として初めて10秒の壁を破る9秒98をマークした男が100メートルでの東京五輪代表権を逃し、「東京での開催が決まってから7、8年間目指してきたが、ここで一区切り」と話した。

5月下旬に右アキレス腱(けん)を負傷し、歩くだけでも痛みを覚えた。この1カ月ほどは、ほぼまともに走り込めず、大一番の前の調整は、思い描いた理想とは大きくかけ離れていた。前日24日は予選が10秒12、準決勝はトップ通過の10秒28で、ともに1着通過していたが、好メンバーが集う決勝ではごまかしが利かなかった。

レース後に足の状態について聞かれると、「いま足の痛みのことを答えてしまうと、足の痛みのせいでこういう順位になったと思われてしまう。足の状態にはお答えできない」。万全の状態で臨めなかった悔しさを胸の内にしまった。

今大会には200メートルにもエントリーしている桐生だが、この日のレースを終えた後に「少し休んでから修正したい。次の試合がいつかはわからないけれど…」。肩を落として話した。

 

◆選考方法 1位の多田、3位の山県はともに参加標準記録(10秒05)を突破済みで、「3位以内」に入ったため2人は代表に決定。2位のデーデーは参加標準記録をクリアできておらず、世界ランキングでの出場資格にも遠く届いていない。そのため日本選手権で「3位以内」には入ったが、100メートル代表にはなれない。残る1枠は参加標準記録を突破した選手の中から、日本選手権の上位順で選ばれるルール。そのため4位の小池が決定的で、1種目最大3人までの条件から、5位の桐生、6位のサニブラウンは落選となる。

男子400メートルリレーについては、日本選手権が選考上「最重要選考競技会」と位置付けられている。100メートルの代表選手に加え、200メートルの代表選手との兼ね合いになるが、デーデーが代表入りする可能性も十分。また「特性と戦略を考慮」して選考するとされており、桐生やサニブラウンの可能性も残っている。