自民党総裁任期のリミットに、滑り込みセーフ-。安倍晋三首相は24日夜、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長との電話会談で、新型コロナウイルスの世界的感染拡大を受け、今夏に予定された東京五輪・パラリンピックを遅くとも来年の21年夏までに開催することで合意したと明らかにした。「人類が新型コロナウイルス感染症に打ち勝った証しとして、完全な形で開催するために緊密に(IOCと)連携したい。開催国の責任をしっかり果たす」と強調した。

大会の延期は各方面に大きな影響をもたらす。一方、首相にとっては、今後退陣しない限り、来年9月30日までの自民党総裁任期中の大会開催という「担保」を得た形だ。延期幅が1年以上なら、さらなる任期延長が認められない限り、首相として大会に臨むことは難しかった。招致決定に立ち会い「大会への思い入れが強い」(関係者)とされるだけに、東京大会を安倍長期政権の「花道」とする選択肢も生まれた。

首相は、任期中もう1度、衆院解散・総選挙のタイミングを探っているとされ、本来は「大会後」となるはずだった今秋が有力視されていた。今回の延期で、6月の通常国会後、長い「政治空白」が生まれる。東京都知事選とのダブル選や秋以降の選挙、内閣改造の臆測も流れるが、首相の「政治判断」次第となる。

しかし、国内での感染は収束の見通しが立たず、与党でも「今年の選挙は厳しい」と厳しい声がある。公文書改ざんで自殺した財務省近畿財務局職員の手記も、政権をジワジワ追い詰めている。当初は「予定通り開催」と発言し、反発を受けて国内聖火リレーが始まる直前、バタバタと延期に滑り込んだ側面も否めない。首相の「政治判断」が思惑通りに進むのか。実際は見通せない。【中山知子】