体操男子の内村航平(32=ジョイカル)に「キングの境地」がよみがえってきた。

東京五輪代表を争う最終国内選考会、全日本種目別選手権の開幕を翌日に控えた4日、会場の高崎アリーナで公式練習が行われ、候補選手が記者会見に臨んだ。4度目の出場を狙う内村もサブ会場で調整し、「自分の演技をすることしか考えてないです。練習というよりは、試合までに逆算してピークを合わせることに重きを置いて、やるべき事をこなした感じです」と最終調整を終えた。

「納得できない感じがあるんですよね。納得いく風にしたい。そこはずっと持ってます」。鉄棒に種目を絞って挑む母国での五輪。選考会が始まった4月の全日本選手権、そして5月のNHK杯、3回の演技ではすべてH難度の大技「ブレトシュナイダー」を成功させたが、ふに落ちない。順位や結果では消化しきれない、体操へのこだわり。いま、五輪を前にして、そこに心を砕く。

同じような心境は? 問われると「ロンドン以降ですね、同じような気持ちでずっとやっていた」と9年前の五輪を挙げた。個人総合を初制覇し、16年リオデジャネイロ大会での2連覇へ向かっていった時期。「やはり演技が余裕を持ってできていて、自分の立ち位置もわかり、そこが個人総合か鉄棒かの違いで、同じような心境でいられるのかなと思いますね」。昨夏に鉄棒専念を決断し、こだわりを煮詰めてきた。「ロンドン以降は結果はある程度残したので、自分の満足する演技を追求してやることにやりがいを感じていたので、鉄棒だけでその境地にいけているのかなと思います」。

「キングの境地」。1枠を争い他5種目のスペシャリストがライバルだが、「気にしてないといいますか。自分は自分なので、どの試合も他人と勝負をしているより、自分のやるべきことやってきた」とさらり。NHK杯までを終え、日本協会が独自に付与する得点ランキングでは、いずれも18年以降の国際大会のトップスコアを上回り、110点。跳馬の米倉英信(24=徳洲会)と並び、首位タイとなっている状況も、特段意識を左右しない。

「やれることをやる。ただシンプルにそれだけ」。泰然とし、鉄棒を握る。

○…今大会の予選、決勝の結果で団体枠の残り2選手も決まる。先に決まった橋本、萱の得点に照らし、チーム最高点を組めるメンバーが選ばれる。得意の跳馬を軸に有力候補の谷川航は、すでに高得点を記録したその跳馬を回避し、他5種目に力を注ぐ。「代表に入るのはゴールではない。金メダルを取るのが目標」と掲げた。全日本で両腕に重傷を負いながら驚異の回復を見せる18歳の北園は、「6種目すべて大事。自分の力を出し切ったら代表になれる」と自信をみせた。

◆個人枠の代表選考 6種目のスペシャリストが最大で2枠を争う。内村が該当する枠は1枠で、全日本選手権、NHK杯(5月、長野)、全日本種目別選手権(6月、高崎)の3大会の選考会で代表権がかかる。各演技の得点を国内外の大会での得点を元にして日本協会が作成する世界ランキングにあてはめ、順位ごとにポイントを与え、5演技の総合ポイントで競う。1位かつ0・2点差以上は40点、1位は30点、2位は20点と続く。6種目の中で1位になった選手が代表に決まる。残るは種目別の予選、決勝の2演技となっている。