開催が延期になった東京五輪の聖火の保管先が福島・Jヴィレッジになった。聖火は25日、福島・いわき市で「復興の火」としての展示を終了。

大会組織委員会の武藤敏郎事務総長が、リレーがスタートする来年まで、スタート地点でもあるJヴィレッジで保管・展示されることを明かした。この日、中止になったグランドスタート会場の撤去が始まったJヴィレッジに、近日中に聖火が届く。

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日本到着以来6日間の被災地での展示を終えた聖火は、ランタンに「納火」され会場を後にした。聖なる火を来年の開幕まで日本で燃やし続けることは、日本側と国際オリンピック連盟(IOC)で合意済み。保管先として組織委の森喜朗会長が前夜に「福島に置いていただきたい」と話した通り、保管する場所はJヴィレッジに決まった。

すでに、Jヴィレッジには県から打診が来ており、近日中には正式に発表される見込み。施設内のどこに置かれるかは未定だが、新型コロナウイルスの影響で人の密集を避ける中で、来場者にも見てもらえるように工夫される。来年の聖火リレースタートまで、Jヴィレッジは世界でも例のない「聖火の灯るトレーニングセンター」になる。

この日、午後からグランドスタート会場の撤去作業が始まった。1年の延期を惜しむように関係者やボランティアらが記念撮影をしたが、来年には再びグランドスタート会場として世界から注目される。それまでの1年、組織委員会の森喜朗会長が話した「世界の希望の道しるべ」となる聖火が、東日本大震災から10年目の復興を、新型コロナに挑む世界の戦いを見守る。

延期が決まって聖火リレーも中止になったが、誰もが望むのは「多くの人が笑顔で見つめる」リレーだ。大事に保管・展示された聖火は来年再び「なでしこジャパン」メンバーの手によって日本列島を巡る旅をスタートさせる。観覧自粛もなく、各地でセレモニーを行う「完全なリレー」を行うために、聖火は1年間スタート地点でその時を待つ。【荻島弘一】