日本オリンピック委員会(JOC)山下泰裕会長(64)が28日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で会見し、東京五輪に出場する日本選手団の目標としていた「金メダル30個」について、達成にこだわらない考えを示した。

新型コロナ禍で様変わりした東京大会の目標に変わりはないか問われると「それが重要か、と聞かれるのであれば『NO!』と、はっきり明言したい。メダルの数ではなく、いかに準備して、少しでもより良い状況にさせるかが共通認識」と断言した。

「金メダル30個」の目標は、山下会長がJOCの選手強化本部長時代に定めたもの。しかし「それには前提条件がある。17、18年以降、日本代表選手団が万全の状況で準備できた場合」と強調し「準備できた場合のメダルと入賞の予測数を各競技団体に確認して、その作業に8カ月くらいかけて30個とした。しかし、前提条件が大きく変わってしまった。万全の体制で臨めない」と説明した

思うように海外遠征できなくなり「選手にとって、国際大会の経験がないことは大きな不安。そして海外の選手が、どれだけの準備をしてきているか把握するのも不可能に近い。その中で引き続き30個を求めていくことに、どれだけの価値があるか」と自ら疑問を投げかけた。

続けて「(下方修正など)目標を再調整すればいいのでは、という意見もあったが、そんな時間はない。ほかにすることがたくさんある。海外選手の準備状況も分かりっこない。『NO』と明言したい。己を信じて、仲間を信じて、チャレンジしてくれれば十分。自分らしく生き生きと輝いてくれれば十分。最善を尽くしてくれれば十分」と語気を強め、最後は「ということで、大会延期後は(目標は)横に置かれた感じで、誰もJOCの中では議論しておりません」と述べた。