日本ラグビー協会は19日、東京五輪男女7人制日本代表メンバー各12人を発表した。男子主将を務める松井千士(26)は、予備登録選手として同行した16年リオデジャネイロ五輪で出場機会なし。同じ立場で4位入賞を見守った藤田慶和(27)とメダルに導く。女子は元15人制日本代表の父を持つ弘津悠(はるか、20)、松田凜日(りんか、19)のコンビが選ばれた。五輪の男子は7月26日、女子は同29日から東京スタジアムで行われる。

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5年の準備期間を経て、日焼けした松井の表情に覚悟がにじんだ。オンライン配信されたメンバー発表会見。主将として最初にマイクを握ると「目標はメダル獲得です。それを実現するために残りの期間、頑張りたい」と誓った。

「4位になれて誇りに思います。ただ、選手として出場できず、ラグビー人生で一番悔しい、メンタル的にもしんどい状態でした」

同大4年で迎えたリオ五輪。大阪・常翔学園高3年時も花園決勝で優勝を決めるトライを挙げ、50メートル5秒7の快足に集まる期待は大きかった。だが、五輪では東福岡高時代に花園を制した藤田と、選手村から歩いて40分ほどかかるホテルに2人で泊まる日々だった。

正規メンバーと練習したのは1度きり。会場に入るパスはなく、王国ニュージーランド撃破、4強入りの仲間を観客席で見つめた。移動もジャケットではなく、ポロシャツと茶色の綿パンだった。帰国後は大学の夏合宿で右脚大腿(だいたい)部を剥離骨折。それでも仲間や家族に支えられ、課題のフィジカル面で大きな成長を遂げた。

重圧のかかる自国開催。岩渕健輔ヘッドコーチは「有言実行してくれる。気持ちを前に出し、厳しい局面でも自分から体を張ってくれる」と主将選出の理由を説明した。松井は誓った。

「あの経験が僕を強くしてくれた。自分史上最高の状態で迎えられる五輪だと思う。すごく楽しみです」

東京で、暴れ回る準備はできている。【松本航】

◆松井千士(まつい・ちひと)1994年(平6)11月11日、大阪市生まれ。6歳からラグビーを始め、常翔学園高、同大を経て、17年にサントリーへ。20年にキヤノンへ移籍。家族は両親と豊田自動織機WTBの兄謙斗(29)。182センチ、88キロ。

○…リオ五輪で松井と悔しさを共有した藤田も、5年間でリーダー格に成長した。15人制でも15年W杯イングランド大会を経験した27歳は「五輪での悔しい思いは五輪でしか返せない。やっとスタートライン」と力を込めた。明大の石田は学生唯一の選出で、松井の常翔学園高の後輩にあたる。167センチ、73キロと小柄な21歳は「最年少はうれしいけれど、五輪で年齢は関係ない。堂々としたプレーで貢献したい」と言い切った。

◆リオ五輪日本代表 15人制の19年W杯日本代表WTB福岡、レメキらが名を連ね、1次リーグ初戦で優勝候補のニュージーランドから14-12で金星。準々決勝はフランスに12-7で競り勝った。準決勝はフィジー、3位決定戦は南アフリカに敗れたが、4位入賞を飾った。