セレッソ大阪が天皇杯を制し、ルヴァン杯との2冠に輝いた。

 振り返って「個」でいえば森島、香川、大久保、南野ら…きらびやかなスターが在籍しながら、タイトルに無縁だったことが信じられない。J2からプレーオフを勝ち上がってJ1に復帰した今季の躍進をどうみるか。個性派集団をまとめあげた尹晶煥監督(44)のマネジメント力に行き着く。

 ルヴァン杯を勝った試合後、MF清武弘嗣(27)が「監督のおかげ」と言った。尹晶煥監督自身もC大阪でプレーし、最大の欠点をまとまりのなさと理解していた。求めた「チーム力」。キャンプは3部練習で鍛え上げ、シーズンはリーグ戦を戦う主力、カップ戦を戦うメンバーを分けた。ただ、カップ戦で活躍した選手をリーグ戦に起用する“ご褒美”も与え、その指針が「活躍すれば使ってもらえる」とチーム全体に活力を生んだ。

 玉田稔社長に聞いた。17年度の指揮を執る監督候補は2人いたという。いろいろあって尹晶煥監督に決まった。その“決まり手”のひとつが「日本語がある程度、通じたからね」。コミュニケーションを重視。通常、規定の取材等は通訳を介するが、尹晶煥監督の日本語能力は高い。選手とは積極的にコミュニケーションを図り、選手から直接に状態を聞く。メンバーが入れ替わっても、サッカーは変わらない。監督の意図が理解され、発揮された結果の2冠だった。

 FW杉本、柿谷、MF清武、山口…現役選手を羅列してもJリーグを代表するクラブといっても遜色ない。18年度はアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)も戦う。17年度は浦和が制したが、クラブのポテンシャルは全く劣っていない。アジア王者、世界王者。大きな地図を描ける。【実藤健一】