後楽園の幕引きも 東京ドームの幕開けも吉村禎章 エスコンフィールド北海道1号は
札幌ドームに別れを告げる最後のアーチは、ロッテ井上晴哉一塁手(33)が放ったそれでした。9月28日の最終戦。日本ハムは3-11で敗れ、有終の美とすることはできませんでした。この試合では計4本塁打が乱れ飛び、井上が最後を締めました。ラストゲームの1発といえば、後楽園の巨人吉村禎章。実は四球だったのに、カウントを間違えて歩かず、挙げ句に飛び出した1本でした。
プロ野球
★札幌Dラストはロッテ井上
まずは井上の一打から振り返ろう。平日では異例の4万人を超える観衆が見守る中、札幌ドーム通算1575本目の本塁打になっていた。
ロッテが7回、7-3とリードしてなおも2死二、三塁。井上が打席に入ろうとすると、投手交代が告げられた。日本ハムの4人目は吉田輝星。その4球目、136キロのフォークを捉えた打球は、直後に左翼スタンドで弾んだ。
日本ハムは1回、近藤健介が2ランを放ったが、投手陣が守り切れなかった。
後楽園のラストゲームでは、本拠を置く巨人吉村が最後を締めくくるアーチをかけた。1987年(昭62)10月18日、広島との試合だった。
2度目の打席となった4回1死。広島白武佳久の8球目を強振すると、打球は左翼席に吸い込まれた。フルカウントから飛び出した本塁打になったが、実はボールが1球抜け落ちていた。ありえないカウント4-2からの1発だった。
初球ストライク、2球目ボール、3球目空振り、4球目ボール。
ここで山本文雄球審は自分のインジケーターと電光掲示板の違いに気づいた。インジケーターは2-2なのに、掲示板の表示は1-2になっていた。
同球審は捕手の達川光男と、吉村に確認した。そろって「1-2じゃないですか」と答えたという。そのままプレーは続行された。
5球目ファウル、6球目ボール、そして7球目もボール。この時点で四球だった。しかし吉村は歩こうとしない。8球目、外角スライダーを捉えた打球が左翼方向にはじき返され、一気にスタンドに飛び込んだ。
★両監督気づくも…4ボール「見て見ぬふり」
吉村にはプロ6年目にして初めて大台を突破する30号になった。試合後、こう振り返っていた。「おかしいな、とは思ったけど、そのまま打っちゃいました。(王貞治)監督から、ここまで来たら30本を狙っていけと言われていたんです。ほんとラッキーでした」。
徳島・吉野川市出身。1974年入社。
プロ野球、アマチュア野球と幅広く取材を続けてきた。シーズンオフには、だじゃれを駆使しながら意外なデータやエピソードを紹介する連載「ヨネちゃんのおシャレ野球学」を執筆。
春夏甲子園ではコラム「ヨネタニーズ・ファイル」を担当した。
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