小柄クローザー鹿取義隆の矜持 リリーフで9回1安打〝完封〟も/物語のあるデータ

巨人から移籍して2年目の今年、ヤクルト田口麗斗投手(28)が新ストッパーとして大活躍しました。マクガフ(現ダイヤモンドバックス)のあとを任されると、リーグ2位となる33セーブ。チーム防御率最下位(3・66)の中で、この男は1・86と奮闘しました。巨人を出て活躍したストッパーといえば、西武に移った鹿取義隆の存在があります。田口同様に小柄ながら、いつ、どんな出番にも対応できるタフネス右腕でした。

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メンタルの強さ

打者を圧倒するだけの球威は持たない。田口はスライダーを主武器に、制球よく最終回を締めた。イヤ、何よりの武器は肝っ玉だったのかもしれない。打者に向かう気持ちの強さ、切り替えの早さが171センチのストッパーを支えた。

今季の初登板から4試合連続セーブ、1ホールドで迎えた広島戦(4月15日)でのことだ。逆転サヨナラ2ランを浴びた。

6試合目の初黒星。1点リードの9回、2者連続の三振を奪って、一瞬の緩みが出たのだろうか。四球の走者を出した直後、秋山翔吾に初球スライダーを捉えられた。

1点差で残すは1人。勝利を九分九厘手にしながら安打1本で試合を壊した。ふつうなら落ち込むところだが、田口は違った。自身のX(旧ツイッター)にこう書いた。

「久しぶりの被弾。今まで、できすぎだな。今日は文句を浴びせてください! 明日からの活力に変えちゃいます」

切り替えは早かった。

巨人の大先輩になる鹿取は、感情を出すことなく、淡々と投げ続けた。

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徳島・吉野川市出身。1974年入社。
プロ野球、アマチュア野球と幅広く取材を続けてきた。シーズンオフには、だじゃれを駆使しながら意外なデータやエピソードを紹介する連載「ヨネちゃんのおシャレ野球学」を執筆。
春夏甲子園ではコラム「ヨネタニーズ・ファイル」を担当した。