【特別編集委員コラム】大学生に教えた「分かりやすい文章の書き方」/連載7
私…特別編集委員の飯島智則は、流通経済大や産業能率大などで、大学生に向けて「分かりやすい文章の書き方」を講義しています。
娯楽紙のスポーツ新聞は、空いた時間などに気軽に読んでほしいと考えて作っています。だからこそ、難しい話題でも、一読すれば誰でも理解できる、分かりやすい文章が求められます。
このノウハウは作文、リポート、企画書、メール、そしてSNSなど、あらゆる文章で汎用(はんよう)性が高いものです。大学生にとっては、就職活動、そして社会人になってから大いに役立つでしょう。
その他野球
◆飯島智則(いいじま・とものり)1969年(昭44)生まれ。横浜出身。93年に入社し、プロ野球の横浜(現DeNA)、巨人、大リーグ、NPBなどを担当した。著書「松井秀喜 メジャーにかがやく55番」「イップスは治る!」「イップスの乗り越え方」(企画構成)。日本イップス協会認定トレーナー、日本スポーツマンシップ協会認定コーチ、スポーツ医学検定2級。流通経大の「ジャーナリスト講座」で学生の指導もしている。
文章を書く上で最も大切なこと
内容は簡単なことばかりです。
まず、文章を書く心構えを伝えます。文章を書く上でもっとも大切なこと…それは「読み手(相手)のことを考えて書く」ことです。
文章はコミュニケーションの手段の1つですから、相手があって成り立ちます。好きなように勝手に書いて、「あとは知らない」では、コミュニケーションは成り立ちません。
親しい友人やクラスメートならば、相手の顔を思い浮かべながら書けます。しかし、例えば日刊スポーツであれば何十万人…百万人以上の方が読んでくれますから、読者全員のことは知りません。誰に向けて書くのか難しいところですが、それでも「これで分かるかな?」「勘違いしないかな?」「迷って、困らないかな?」と、読み手の立場から考える必要があります。
「伝える」と「伝わる」は似て非なるものです。相手に伝わって初めて、コミュニケーションは成立するのです。
分かりやすい文章を書くためのアドバイス
心構えを理解してもらった上で、「分かりやすい文章を書くためのアドバイス」をします。5点あります。
❶主語を明確に書く…文章は「主語」を明確に決めてから書き出しましょう。スポーツの試合など複数の主語が出てくる文章は、読み手が混乱しないよう注意が必要です。省略しても通じるかというチェックも大切です。
また、主語と述語は、なるべく近づけた方が分かりやすいものです。日本語は文頭が主語、文末が述語になりやすいので、長い文章だと遠く離れてしまい、意味が分かりにくくなります。そんなときは主語と述語を近付けると分かりやすくなります。もっとも簡単に近づける方法は、各文章を短くすることです。
うまく書けないときは、文章を短くすると分かりやすくなります。
❷書き出しにこだわる…時系列に沿って書く人が多いですが、一番のニュース、もっとも大切な事柄から書くと分かりやすくなります。また、インパクトを持たせる工夫をすると、より魅力的な文章になります。
❸具体的に書く…例えば「さまざまな色」を「赤、青、黄色、緑、茶」などと記述することで、読み手のイメージがよりふくらんでいきます。「とても暑い」よりも「気温40度の暑さ」、「久しぶり」を「12年ぶり」といった記述をしていくことで、個人の感覚に左右されず、正確に伝わります。
❹むだな言葉を省き、簡潔に書く…繰り返し言葉を削るだけですっきりした文章になります。いくつか例を挙げましょう。
壇上に上がる→→登壇する
大谷の逆転2ランで試合をひっくり返した→→大谷の2ランで逆転した
カットボールという球種は、空振りを取るための球種ではなく、ゴロを打たせてアウトを取るための球種だ→→カットボールは、空振りではなくゴロを打たせてアウトを取るための球種だ
❺推敲(すいこう)する…書き終えた文章の精度を高めるため、間違いを正したり、構成を練り直します。私は初稿よりも、推敲に時間をかけて完成させていきます。
推敲のポイントも挙げます。
①~④は、時間が許す限り繰り返します。⑤~⑦を考えると、文章上達のトレーニングになります。
文章が苦手な人ほど、1回で書き終えたがりますが、一発必中は難しいです。同じ労力をかけるなら、「推敲」に力を入れるのも一策です。
140文字の文章トレーニング
個別指導は「140文字」の文章を用います。ツイッターの文字数であり、新聞でも短い記事…雑感と呼ぶ記事も120~140文字程度で書かれています。
原稿用紙で何枚もの文章より、140字での練習が成長につながると考えています。
短いと思うでしょうが、ちょっとしたストーリー、ドラマを描くこともできます。授業では学生に140字で文章を書いてもらい、一緒に精度を上げていきます。
ここでは私が書いた140字の物語を紹介します。
4月1日。今日から新設の特別編集委員室に異動して、5年ぶりに取材して記事を書く立場に戻った。最初に取り組むテーマは「スポーツ指導における体罰と暴言」。社会問題になった今なお、なくならないのはなぜか? 現状把握とともに今後の指針まで踏み込みたい。残り数年、全力で記事と向き合っていく。(140字)
昨夜は恐ろしい夢を見た。取材を録音したレコーダーが見当たらずに探し回るが、どうしても見つからない。「あの喫茶店だ」。取材後に入った店へ走ろうとするが、体に力が入らず前へ進めない。目が覚め、夢と気付いてホッとした。写真と音声は、あらためて取材後すぐPCに取り込むよう基本を徹底したい。(140字)
私はまず文字数を気にせずに書き込み、そこから言葉や表現を修正しながら文字数を整えていきます。言い直しで収まらない場合は、情報の優先順位を考えます。
伝えたい内容が140字ぴったりに収まると、かなりの快感があります。
ツイッターは文章力のトレーニングになりますので、ぜひ試してみてください。もちろん内容には、くれぐれも気を付けてくださいね。
コラム「手帳の余白」
日刊スポーツに「特別編集委員室」が立ち上がりました。取材経験が豊富、かつ表現力が豊かなライター集団。「日刊スポーツ・プレミアム」を中心に、健筆を振るいます。飯島智則編集委員は、コラム「飯島智則 手帳の余白」を随時掲載。どうぞお楽しみ下さい。

1969年(昭44)生まれ。横浜出身。
93年に入社し、プロ野球の横浜(現DeNA)、巨人、大リーグ、NPBなどを担当した。著書「松井秀喜 メジャーにかがやく55番」「イップスは治る!」「イップスの乗り越え方」(企画構成)。
日本イップス協会認定トレーナー、日本スポーツマンシップ協会認定コーチ、スポーツ医学検定2級。流通経大の「ジャーナリスト講座」で学生の指導もしている。
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