【平成の開幕戦事件簿〈後編〉】楽天50年ぶり参入1勝、東北の底力

2024年(令和6)のプロ野球は、セ、パ両リーグとも3月29日に開幕する。他と同じように全143試合のうちの1試合なのだが、先発に指名された投手は意気に感じ、選手たちは特別な思いを込めてプレーする。「たかが開幕戦、されど開幕戦」である。さて、平成時代の印象深い開幕戦を振り返る記事の後編は、2004年(平16)から2018年(平30)。(内容は当時の報道に基づいています。紙面は東京本社最終版)

プロ野球

◆2005年(平16)新球団の楽天が初勝利

パ・リーグの開幕を報じる3月27日付の紙面に「楽天 50年ぶり!!参入1勝」の見出しが躍る。

前年2004年(平16)は球界再編騒動の年である。近鉄とオリックスの経営統合に端を発し、球界初のストライキにまで発展。その末に、楽天ゴールデンイーグルスという新しい球団が誕生した。

紙面を見てみよう。

50年ぶりにプロ野球に新規参入した楽天が、ロッテとのパ・リーグ開幕戦に3-1で勝利し、歴史的1勝を挙げた。エース岩隈久志(23)が力投した。散発5安打7奪三振で完投。打線も援護し、3回に2点を先制、9回にはダメ押しした。万全の体調ではなく、マウンドで転倒するシーンもあったが、初代エースの意地が支えた。合併球団オリックス入りを強硬に拒み、自ら選んだ新天地。2年連続15勝右腕が先陣を切り、楽天の球団史が始まった。

2005年3月27日付の1面

2005年3月27日付の1面

2面には、新しい球団らしく「1号アラカルト」として、さまざまな項目で「初」が載っている。

1号アラカルト

◆初の訪問 10:52 三木谷オーナーが千葉マリンに到着

◆初パフォーマンス 11:40 クラッチとクラッチーナが敵地開幕戦に異例の登場

◆初アウト 13:00 1回1番関川が左飛

◆初ヒット 13:03 1回2番高須右安打「打順が早かっただけです」

◆初四球 13:08 1回3番川口「すごくいいムードだった」

◆初死球 13:09 1回4番ロペス「…」

◆初三振 13:11 1回5番山崎

◆第1球 13:17 1回岩隈 スライダーがボールに

◆初二塁打・初マルチ安打 13:40 3回1死2番高須「うちは競争激しいですから」

◆初打点・初得点 13:41 3番川口が右中間二塁打で高須が生還。川口は「貢献できてよかった」。この時点で他球場0-0のため、05年パ・リーグの初得点

◆初失策 14:38 6回、一塁・川口が小坂のゴロをお手玉。田尾監督は「あれ以外は完璧な守りでした」

◆初披露 7回表、楽天球団歌が場内に流れる。三塁側、レフト席から風船が飛ぶが、タイミングはバラバラ

◆初失点 15:01 7回裏に岩隈が里崎に適時打浴びる

◆初勝利 15:59 3-1で快勝

なお、翌日の第2戦は0-26で大敗した。まだ戦力が整っておらず、選手層が薄い中での船出だった。

2005年3月28日付の紙面

2005年3月28日付の紙面

◆2007年(平19)高橋由伸が先頭初球アーチ

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編集委員

飯島智則Tomonori iijima

Kanagawa

1969年(昭44)生まれ。横浜出身。
93年に入社し、プロ野球の横浜(現DeNA)、巨人、大リーグ、NPBなどを担当した。著書「松井秀喜 メジャーにかがやく55番」「イップスは治る!」「イップスの乗り越え方」(企画構成)。
日本イップス協会認定トレーナー、日本スポーツマンシップ協会認定コーチ、スポーツ医学検定2級。流通経大の「ジャーナリスト講座」で学生の指導もしている。