【金足農】不祥事の危機…KKコンビ苦しめたOBが立ち上がった/毎週水曜連載〈2〉

金足農業(秋田)には、大きな危機がありました。2022年(令4)9月、部内のいじめ問題が表面化し、日本学生野球協会から3カ月の対外試合禁止という処分を受けたのです。2018年(平30)夏の甲子園で準優勝し、日本中に旋風を起こしてから、わずか4年後に迎えた危機。これが変革の転機となりました。

高校野球

初出場でベスト4

3月下旬に恒例の関東遠征で迎える最後の夜、金足農ナインは埼玉・狭山市内にある会館の一室に集まっていた。

OBの長谷川寿による「アンガーマネジメント」の講義を聞くためだった。

長谷川が言う。

「それぞれの解釈を合わせるために、対話を重視していこうという話です。普段から互いに言葉をかけて理解しあえば、誤解も生じず、チーム内の関係もうまくいく。いじめ問題が起きたことから話しているのですが、今の選手たちは十分に理解してくれていますね。もう大丈夫かな」

昨年から新入生と保護者に向けて、スポーツマンシップの勉強会も実施している。高校生が興味を持つようクイズ形式も用いて、「金足農で過ごす3年間でみんなから信頼される人、スポーツマンになろう」と呼びかけている。

3月下旬の関東遠征も応援に駆けつけたOBの長谷川氏(右)

3月下旬の関東遠征も応援に駆けつけたOBの長谷川氏(右)

彼は金足農が甲子園に初出場した1984年(昭59)の「4番キャッチャー」で、主将でもあった。

センバツに続いて出場した夏は甲子園でベスト4に入り、準決勝で敗れたものの、桑田真澄、清原和博を擁するPL学園(大阪)を2-3と苦しめた。

2-1とリードして8回を迎えたが、1死から4番清原に四球を与え、続く5番桑田に左翼ポール際へ逆転2ランを浴びた。

ワンストライク後の2球目、長谷川は外角に外れるカーブを要求したが、水沢博文が投じた球はストライクゾーンに入ってしまった。桑田はこの球を逃してくれなかった。

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編集委員

飯島智則Tomonori iijima

Kanagawa

1969年(昭44)生まれ。横浜出身。
93年に入社し、プロ野球の横浜(現DeNA)、巨人、大リーグ、NPBなどを担当した。著書「松井秀喜 メジャーにかがやく55番」「イップスは治る!」「イップスの乗り越え方」(企画構成)。
日本イップス協会認定トレーナー、日本スポーツマンシップ協会認定コーチ、スポーツ医学検定2級。流通経大の「ジャーナリスト講座」で学生の指導もしている。