【金足農】日本初?企業コンサルタントによる野球部立て直し/毎週水曜連載〈3〉

2018年(平30)に甲子園で準優勝し、日本中に旋風を巻き起こした金足農は、2022年(令4)に部内のいじめ問題が表面化し、対外試合禁止の処分を受けました。再発防止と野球部の立て直しに臨むべく、企業コンサルタントを招いて「未来創造プロジェクト」と名付けた取り組みを始めました。

高校野球

処分の苦い思い出

企業コンサルタントの大西みつる(ヒューマンクエストCEO、立命館大経営学部客員教授)は、真夏にかかってきた電話を鮮明に覚えている。

金足農OBの長谷川寿から、「野球部の再建に手を貸してほしい」と依頼された。

大西が振り返る。

「なかなか難しい話がきたなと思いましたね。高校野球の現場に外部のコンサルタントが乗り込んで、風土改革をやるというのは、多分、日本ではないと思うんですね」

「私も母校の野球部の立て直しを手伝ったことはあったけど、ほとんど初めてのアプローチと言ってよかった。当然、監督はじめスタッフからの反発もあるでしょうし、そもそも変わる必要性を感じていないかもしれない。『長谷川さん、なかなか難しいよ』と言いました」

企業コンサルタントの大西氏

企業コンサルタントの大西氏

大西が研修を実施した企業を挙げると、SMBCコンサルティング、全日空、アステラス製薬、ハウス食品、日本テレビ、キヤノン、スズキ自動車、NTTドコモ、江崎グリコ、アイシン、東京ガス、山善、デンソー、JCB、ネスレ日本など、枚挙にいとまがない。

企業のコンサルティングでは百戦錬磨の大西だが、高校の野球部に関わることに戸惑いがあった。

ただ、「なかなか難しい」と口にしながらも、頭に浮かんだのは自身の高校時代だった。

「私もね、高校時代に出場停止処分を経験しているんですよ。しかも、私がその原因だったのです。長谷川さんから金足農の話を聞いたとき、その記憶が鮮明によみがえりました」

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編集委員

飯島智則Tomonori iijima

Kanagawa

1969年(昭44)生まれ。横浜出身。
93年に入社し、プロ野球の横浜(現DeNA)、巨人、大リーグ、NPBなどを担当した。著書「松井秀喜 メジャーにかがやく55番」「イップスは治る!」「イップスの乗り越え方」(企画構成)。
日本イップス協会認定トレーナー、日本スポーツマンシップ協会認定コーチ、スポーツ医学検定2級。流通経大の「ジャーナリスト講座」で学生の指導もしている。