【西山真瑚〈2〉】「えっ僕なんかが?」憧れクリケット留学で手にした欧州流と北米流

日刊スポーツ・プレムアムでは、毎週月曜日にフィギュアスケーターのルーツや支える人の思いに迫る「氷現者」をお届けしています。

シリーズ第7弾は、西山真瑚(20=早稲田大)を連載中。シングルで小学校時代に日本一、アイスダンスで全日本ジュニア選手権2連覇の二刀流。今季は再びシングルに専念し、月末の冬季国体(27~31日、フラット八戸)で集大成を迎えました。

第2回は、「憧れ」カナダ・クリケットクラブへの留学です。

フィギュア

23年冬季国体、成年男子SPで演技する西山

23年冬季国体、成年男子SPで演技する西山

中3の秋の打診、樋口・オーサー両コーチの縁

「高校からクリケットに行ってみない?」

西山の耳に、予想だにしなかった言葉が入ったのは中学3年の秋だった。明治神宮外苑FSCで師事する樋口豊コーチから。無論、カナダの「トロント・クリケット・スケーティング&カーリング・クラブ」のことである。

西山 中学3年の秋でしたが、お話しを初めていただいた時は海外になんて全く考えていなくて。「え…。僕なんかが行っていいんですか?」という感じでした。

前段として、クリケットクラブを体験したことがあった。

西山 同じ中学3年の夏でした、クリケットのサマーキャンプに行かせていただいたんです。樋口先生とブライアン(・オーサー)先生がすごく親しいので、そのご縁で。短期でクリケットを体験させていただきました。

夢の空間だった。スケート靴を履いて、フェンスのない、あの氷の上へ。

西山 初めてクリケットのリンクに足を踏み入れた時は「テレビの場所だ~」って、ものすごくドキドキしました。ドキドキし過ぎて最初のスケーティングで転んじゃって。ブライアンにめっちゃ笑われました(笑い)。でも、緊張と同時にワクワクした気持ちもありましたね。日本のリンクにはない、特別な造りでしたから。

クリケットクラブでともに学んだチャ・ジュンファン(左)。隣はブライアン・オーサーコーチ。16年ジュニアGPファイナルにて

クリケットクラブでともに学んだチャ・ジュンファン(左)。隣はブライアン・オーサーコーチ。16年ジュニアGPファイナルにて

同い年のチャ・ジュンファンがすでに所属

16年7月に3週間。韓国のチャ・ジュンファン(車俊煥)がいた。

西山 サマーキャンプにいたことを覚えています、同い年なんですよ。ジュンファンは既にクリケットに移ってトレーニングしていて、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)習得を目指して練習していましたね。

チャは前年の春に韓国の首都ソウルを離れ、カナダへ渡っていた。世界の同世代は1歩先を進んでいた。

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スポーツ

木下淳Jun Kinoshita

Nagano

長野県飯田市生まれ。早大4年時にアメリカンフットボールの甲子園ボウル出場。
2004年入社。文化社会部から東北総局へ赴任し、花巻東高の大谷翔平投手や甲子園3季連続準優勝の光星学院など取材。整理部をへて13年11月からスポーツ部。
サッカー班で仙台、鹿島、東京、浦和や16年リオデジャネイロ五輪、18年W杯ロシア大会の日本代表を担当。
20年1月から五輪班。夏は東京2020大会組織委員会とフェンシング、冬は羽生結弦選手ら北京五輪のフィギュアスケートを取材。
22年4月から悲願の柔道、アメフト担当も。