【中村俊介/上】手をつないだ羽生結弦への憧れ 三浦佳生らキラ星ライバルたちとの壁

日刊スポーツ・プレミアムではフィギュアスケーターのルーツや支える人の思いに迫る「氷現者」をお届けしています。

毎週月曜日に配信してきたコーナーですが、8日にはジュニア、シニアのグランプリ(GP)シリーズ2戦を合わせて上位6人(組)に入った選手が出場する、GPファイナルがイタリア・トリノで開幕します。

「氷現者」の第4弾は拡大版として、ジュニアGPファイナルに初出場を決めた男子の中村俊介(17=木下アカデミー)のルーツを、2回にわたって紹介。上編では運動能力抜群の少年が、スケートの世界に引き込まれた過去をたどります。(敬称略)

フィギュア

〈ジュニアGPファイナル初出場直前企画 「氷現者」特別編 火、木に特別配信〉

【絶賛配信中!「氷現者」ラインナップはこちらから】

全日本ジュニア選手権、総合4位のフリー演技

全日本ジュニア選手権、総合4位のフリー演技

ソチ五輪直後の羽生とリンク1周

フィギュア界における名古屋の冬の風物詩が、桜の咲く季節に行われていた。

2014年4月3日、名古屋市ガイシプラザ。現在は年明けの開催で定着した「名古屋フィギュアスケートフェスティバル」は、その日に予定されていた。

関係者用入り口へ、世界で活躍するスケーターが次々と姿を見せた。浅田真央、鈴木明子、村上佳菜子、安藤美姫、町田樹、小塚崇彦、織田信成…。個々でリハーサルに励むトップ選手たちとは対照的に、スタッフからイベントの流れの指示を受ける小学生の「花束スケーター」たちがいた。

その1人が、当時小学2年生の中村だった。

1カ月半ほど前、ロシアのソチでは五輪が行われていた。注目の男子フリー。金メダルをつかんだのは、19歳の羽生結弦だった。テレビで思わず見入っていた、その五輪王者も、名古屋のリンクへとやってきた。

年の差は11歳。全国大会が始まるノービスB(6月30日時点で満9~10歳)にも至っていない中村に、羽生は優しく接してくれた。手をつなぎ、リンクを1周した。自然と目が輝いた。

「オリンピック帰りの羽生くんに手をつないでもらって『こんな格好いい選手になりたいな』と思って、そこからスケートに夢中になりました。より好きになった、という感じです」

中村にとって、それまでの夢は「五輪」ではなかった。

名古屋の繁華街として知られる栄からそれほど遠くない、千種区で生まれた。4つ上の姉がスケートをしており、5歳のころ、母と姉と3人で大須の「名古屋スポーツセンター」へ足を運んだ。

だが、それよりも夢中になっていた競技があった。

「元々、4歳ぐらいからサッカーを始めて、チームにも所属していたんです。むちゃくちゃ好きで、サッカー選手になりたかった。そんな時に母に『スケートもやってみて』と連れられたのが、きっかけです」

本文残り77% (3235文字/4218文字)

大学までラグビー部に所属。2013年10月に日刊スポーツ大阪本社へ入社。
プロ野球の阪神を2シーズン担当し、2015年11月から西日本の五輪競技やラグビーを担当。
2018年平昌冬季五輪(フィギュアスケートとショートトラック)、19年ラグビーW杯日本大会、21年東京五輪(マラソンなど札幌開催競技)を取材。
21年11月に東京本社へ異動し、フィギュアスケート、ラグビー、卓球などを担当。22年北京冬季五輪もフィギュアスケートやショートトラックを取材。
大学時代と変わらず身長は185センチ、体重は90キロ台後半を維持。体形は激変したが、体脂肪率は計らないスタンス。