【渡辺倫果〈上〉】母は問うた「家族を犠牲…いいのね」小2の覚悟が出発点
日刊スポーツ・プレミアムでは、毎週月曜日にフィギュアスケーターのルーツや支える人の思いに迫る「氷現者」をお届けしています。
シリーズ第3弾は渡辺倫果(20=法大)が登場。トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を武器に、先月のグランプリ(GP)シリーズ第2戦スケートカナダで初優勝を飾り、第5戦NHK杯では5位。成長著しい新ヒロイン候補を全3回で紹介します。
上編は、ダブルアクセル(2回転半)を8歳にして跳んだ幼少期と、活動をサポートする親と3人の兄についてお送りします。
フィギュア
「記憶あります」3歳で荒川静香の金見て「始めたい!」
8歳の記憶が、強烈に刻まれている。
<ホントにもう、あんたって子は。家族みんなを犠牲にすることになるのよ。いいのね?>
母親から念を押された。小学校2年の時。
「ずっと言われてきましたね。スケートの話より、親とか、お兄ちゃんたちにしてもらっていることの大変さを、感謝を、ずっと口うるさい感じで言われてきました(笑い)。そんなの『小学生で言われたって知らないよ~』って感じなんですけどね」
遊びか、本気か。夢のオリンピック(五輪)こそ、まだまだ輪郭を頭の中で描けなかったころ。フィギュアスケートを真剣に続けていくのか、決断を迫られていた。
8歳にしてダブルアクセル(2回転半ジャンプ)を跳べた後のことだった。
陸上経験者の母の独学指導で「かわいそうな練習」
振り返れば、この競技を始めたのは3歳だった。
2002年(平14)の7月に生まれ、物心がつき始めた06年2月、トリノ五輪(オリンピック)女子で荒川静香さんが日本初の金メダルを獲得した。
「記憶、ハッキリあります。テレビで見ていて。すぐ『私も始めたい!』って親に言って、リンクに連れて行ってもらいました」
千葉県で生まれ、横浜市に転居。西区のハマボールスケートセンターに通い始めた。同じくトリノ五輪に出場し、4位に入賞した村主章枝を輩出したリンクだった。
「スクールに入れてもらって、終わったら、お母さんと一緒にまた滑って」
施設の屋上には、横浜高時代の松坂大輔投手が通ったバッティングセンターがあった。市の名物レジャー施設だった。ところが、渡辺が加入して1カ月後の06年春、閉鎖が決まる。
後に、さまざまリンクを渡り歩いてスケーティングを磨いてきた人生。その始まりを告げるかのように、4歳で最初の移籍を経験した。翌07年1月に同所は36年の歴史に幕を閉じた。
「すぐ新横(KOSE新横浜スケートセンター)に移って。練習の7、8割は新横をベースに、東神奈川(横浜銀行アイスアリーナ)も週末に1回、みたいな生活が始まりました」
指導者の他に、付きっきりで指導してくれたのは母だ。
「トレーニングとかは、お母さんの独学で。もともと競技としてテニス、走り幅跳びをやっていたみたいです。私のアクセルは、幅跳びの練習方法を活用したものでした」
娘に教えようと、自分でも跳んでみるようになった母親もアクセルが得意だったという。
「スケートのことは全然知らなかったんですけど、ボチボチ運動神経がいいので、すぐ滑れたみたいなんです。で、アクセルを跳ぶ時の筋肉の連動が陸上と同じだ、と気付いてしまったらしく(笑い)。もう、ずーっとアクセルの練習ばかりしていました」
中でも覚えているのが「かわいそう…」な反復だった。
「地面の上に大きなぬいぐるみを置いて。『踏んだらかわいそうでしょ』って言われながら『跳びなさ~い、左足で踏み切って右足で降りなさ~い』って。スティッチだったかな、寝そべっている大きな人形があって『踏まれたら痛いわよ』と(笑い)。小さいころは結構それが楽しくて。そんな日常でしたね」
アクセル「はぁ3年?ピキッって」2週間で習得
20歳になった現在、ロンバルディア杯、スケートカナダと国際大会2連勝で世界を席巻する要因の1つが3回転半。その原型、2回転半は8歳で跳べるようになった。しかも、脅威の早さだった。
「始めてから2週間で習得したんですよ。(天才?)いえいえ、よく『すごいね』とか言われるんですけど、もう努力だけで。
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2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて17年。25年4月に初の異動で野球部へ配属となりました。競技経験はありませんが、現在は息子が通う少年野球チームで“球拾い”コーチとして奮闘中。記者としても、様々な話題を拾います。ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。クラフトビール好きです。
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