体罰や暴言を受けたら 学校?協会?警察?/指導者必読の連載〈4〉

スポーツ指導の現場では、なぜ体罰や暴言が続くのでしょうか? 今年に入ってからも体罰によって指導者が処分される事件が後を絶たず、暴行により逮捕される事案もありました。大阪市立桜宮高のバスケットボール部主将が、顧問を勤める教員の体罰を苦に自殺をしてから10年が過ぎ、4月25日には、スポーツ5団体が「スポーツ界における暴力行為根絶宣言」を表明してから10年という節目を迎えます。指導に携わるさまざまな人々の証言から、あらためてスポーツ指導を考えます。第4回は、体罰や暴言が起きた後の対処についてです。一体どのような対応をしてもらえるのか? 調査は可能なのか? 

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体罰や暴言の調査は一筋縄ではいかない。

首都圏にある高校のハンドボール部で、監督を務める教員が約3メートルの近距離から選手に向けてボールを投げつけた。ボールは選手の後頭部に当たった。

事が明るみに出て、学校側が調査すると、当該教員は「ポストプレーの練習でした」と返答した。練習の一環で投げたボールを、選手がキャッチできなかったというわけだ。

選手側が「いきなり投げつけられた」と言っても、動画でもない限り、証言は平行線をたどってしまう。

近年、体罰や暴言を伴う指導を相談する窓口は増えている。日本スポーツ協会をはじめ、各競技団体、学校、教育委員会などでも、相談を受け付けている。

指導に対する相談が届いた場合、どのような対応をするのか。1つの例として、神奈川県教育委員会の担当者に聞いた。

「学校の管理職に連絡し、調査を行います。相談者が匿名を希望するなどにより対応は変わりますが、各学校では情報を元にクラスや部活動で体罰等がなかったか、アンケートや個別面談をして、つらい思いをしている生徒がいないか調査します。併せて、本人や他の関係職員にも聞き取り調査を行い、客観的な視点で状況を把握します」

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編集委員

飯島智則Tomonori iijima

Kanagawa

1969年(昭44)生まれ。横浜出身。
93年に入社し、プロ野球の横浜(現DeNA)、巨人、大リーグ、NPBなどを担当した。著書「松井秀喜 メジャーにかがやく55番」「イップスは治る!」「イップスの乗り越え方」(企画構成)。
日本イップス協会認定トレーナー、日本スポーツマンシップ協会認定コーチ、スポーツ医学検定2級。流通経大の「ジャーナリスト講座」で学生の指導もしている。