脱マフィアできた、ある野球コーチの体験/指導者必読の連載〈8〉

スポーツ指導の現場では、なぜ体罰や暴言が続くのでしょうか? 今年に入ってからも体罰によって指導者が処分される事件が後を絶たず、暴行により逮捕される事案もありました。大阪市立桜宮高のバスケットボール部主将が、顧問を勤める教員の体罰を苦に自殺をしてから10年が過ぎ、4月25日には、スポーツ5団体が「スポーツ界における暴力行為根絶宣言」を表明してから10年という節目を迎えます。指導に携わるさまざまな人々の証言から、あらためてスポーツ指導を考えます。第8回は、「マフィア指導の撲滅」をテーマに活動するベースボール・コーチング・アカデミーに迫ります。

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ベースボール・コーチング・アカデミーは、主に野球の指導者や保護者、審判が会員登録し、SNSなどを使って情報を交換している。2005年1月に発足し、現在の会員数は3300人を超える。

代表の寺澤恒氏は学校の教諭で、かつては野球部の監督を務めていた。本場の野球指導を学ぼうと、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に短期留学した際、米国人コーチから「日本はマフィアがコーチをしているんだろう。選手に向かって、ひどい言葉を浴びせるそうじゃないか」と言われた経験がある。

恥ずべき指導をなくすべく、アカデミーは「マフィアのような指導を撲滅する」という目標を掲げている。本連載の題名は、ここから取っている。

さて、アカデミーの詳細を書く前に、寺澤氏とともに学童野球を指導する現場に行ってみたい。暖かくなってきた3月のある日、千葉県野田市の「清水タイガース」を指導するというので、同行させてもらった。コーチの1人が、同アカデミーのメンバーという縁から実現した。

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編集委員

飯島智則Tomonori iijima

Kanagawa

1969年(昭44)生まれ。横浜出身。
93年に入社し、プロ野球の横浜(現DeNA)、巨人、大リーグ、NPBなどを担当した。著書「松井秀喜 メジャーにかがやく55番」「イップスは治る!」「イップスの乗り越え方」(企画構成)。
日本イップス協会認定トレーナー、日本スポーツマンシップ協会認定コーチ、スポーツ医学検定2級。流通経大の「ジャーナリスト講座」で学生の指導もしている。