辰吉寿以輝の現在地〈16〉8・27、中嶋一輝との握手

平成のカリスマ、丈一郎を父に持つ辰吉寿以輝(28=大阪帝拳)。

日本初の親子世界王者につながる道を一途に歩む。

8月27日、東洋太平洋スーパーバンタム級王者中嶋一輝(31=大橋ジム)の初防衛戦を視察。

その場で、中嶋のベルトに挑戦することが決定的となった。

ボクシング

赤コーナー下の特等席

会場は熱気に包まれていた。

8月27日、東京・後楽園ホール。

1620人が詰めかけたボクシングの聖地に、寿以輝の姿もあった。

大橋ジムが主催する「フェニックスバトル」。

 日本タイトル2試合、東洋太平洋1試合と3大タイトル戦が組まれていた。

メインは、王者中嶋対挑戦者和気慎吾(37)の東洋太平洋スーパーバンタム級タイトルマッチ。

同級9位にランクされる寿以輝は、チャンピオン側の赤コーナーリング下に陣取った。

8月27日、リングに向かう中嶋一輝(手前)と観戦する辰吉寿以輝

8月27日、リングに向かう中嶋一輝(手前)と観戦する辰吉寿以輝

前から2列目の特等席。

中嶋陣営の大橋会長が用意したものだった。

勝者への挑戦を狙う寿以輝にとって、敵情視察だ。

サウスポー同士の試合

挑戦者の和気は、キャリア40戦を超えるベテラン。リーゼントが代名詞で、ラストチャンスにかける技巧派のサウスポーだった。

中嶋は今年2月に同級王座に返り咲いたばかり。

強打が自慢のサウスポーで、初防衛でさらに上を目指している。

寿以輝は、決意のこもった目で入場する中嶋を見定めるように視線を注いだ。

リング上の2人にとっても、寿以輝にとっても、大きな意味を持つ試合が始まった。

第1ラウンド

1回、和気慎吾(右)にパンチを繰り出す中嶋一輝

1回、和気慎吾(右)にパンチを繰り出す中嶋一輝

中嶋はガードを高く掲げて、じっくりと前に出た。一方の和気は37歳とは思えない軽快なステップ。長いジャブ、ストレートを放ち、中嶋の前進を止める。パンチにスピードがあり、連打も繰り出した。

1回、和気慎吾(左)のボディーを攻める中嶋一輝

1回、和気慎吾(左)のボディーを攻める中嶋一輝

中嶋は手数が少ないが、固いガードを保ったまま、得意の接近戦を狙っていく。大声援を受けた和気がリズムにつかんで終えた。

中嶋9-10和気

第2ラウンド

2回、和気(右)からダウンを奪う中嶋

2回、和気(右)からダウンを奪う中嶋

幕切れは突然だった。和気が再び右ジャブをついて軽快に動いた。中嶋はガードを掲げたまま、じりじりと迫る。そして1分過ぎ、オーバーハンド気味の左が和気の右耳の後ろにヒットした。かすめるようなパンチだったが、和気は後方に下がり、体のバランスを崩した。明らかにダメージを抱えた。頭部のガードを固めた和気の動きを冷静に見極めて、中嶋は強烈な左右アッパーをボディーにたたき込んだ。和気はマウスピースを吐き出そうになりながら、ぎりぎりでこらえる。中嶋は体勢を崩した相手を逃さない。再び左のオーバーハンドを和気の側頭部にヒット。腰を落とした相手に連打を集めた。後方に倒れた和気を見て、レフェリーが試合を止めた。

本文残り61% (1651文字/2691文字)

スポーツ

益田一弘Kazuhiro Masuda

Hiroshima

広島市生まれ。2000年の入社からバトル、相撲、サッカー、野球を担当して、13年からオリンピック担当。
14年ソチ、16年リオデジャネイロを取材して、18年平昌、21年東京は五輪班キャップを務める。東京五輪後に一般スポーツデスク。
大学時代はボクシング部で全日本選手権出場も初戦敗退。アマチュア戦績は21勝(17KO)8敗。