競輪、楽しんでいますか?

 ちょっとしたひと言にグッとくることがある。

 川崎ナイターの準決11Rで、伊藤慶太郎選手の先行に乗って快勝した藤原憲征選手がポツリ。

 「今日は慶太郎が自分のいい仕事をしてくれた。出切るまでがあいつの仕事。出切ってからは俺の仕事。お互いいいレースができたと思う。俺も(伊藤の)オヤジを随分引っ張ってきたし、随分怒られてきたからね。ま、順番でしょう」。

 「オヤジ」とは、かつての関東の名マーカー伊藤公人氏(引退)であることはいうまでもない。そんな1つ1つの歴史がそこここにあるから、競輪は取材していて楽しい。

川崎ナイター準決快勝後、ホッとした表情を見せる藤原憲征選手
川崎ナイター準決快勝後、ホッとした表情を見せる藤原憲征選手

 ちなみに、決勝は伊藤-小島雅章-藤原の並び。初日特選も同じだったが、その時は藤原は「埼玉勢から。後手に回ったら(切り替えも)考える」というシビアなコメントだった。だが、決勝前は「埼玉勢へ。“から”はなし」と切り替えなしを強調。伊藤への信頼感が確固たるものになった証しだろう。

伊藤慶太郎選手
伊藤慶太郎選手

 ある若い記者に「藤原さんて、昔はすごい選手だったんですか?」と聞かれた。大したキャリアもない当方だが、ついつい「G1優勝こそないが、ダービーで2回も決勝に乗っているんだぜ」と答えてしまった。その若手記者にも、藤原の何ともいえない風格が感じられたのだと思う。決勝も楽しみだ。

 余談だが、今開催で、89年の幻のグランプリレーサー・工正信選手が、同期で先日引退した鈴木誠選手のTシャツをさりげなく着ていたのも印象的だった。ナイター開催で締め切りに追われ、写真を撮れなかった己自身に怒りを覚える。ユーザーの皆さん、申し訳ありません。

 当時、当方はまだボート担当で1人の競輪ファンだったが、あのころの工選手はものすごく強くて格好良かった。同い年として、本当にまぶしかった。

 工選手、まだまだ頑張って下さい!【栗田文人】