中川誠一郎(40=熊本)が今年2度目のG1制覇を果たした。

打鐘前から先行した脇本雄太に乗り、新田祐大のまくりを振り切っての差し切りV。ナショナルチーム全盛の競輪界で、元ナショナルチームメンバーが意地の一発を見舞った。中川は2月の別府全日本選抜以来のG1・3勝目。2着に新田、3着には小原太樹が入った。

逃げる脇本、まくる新田。やはりナショナルチームのワンツーか。だが、勝ったのは元ナショナルチームの中川だった。直線鋭く抜け出すと、軽く右手を挙げてファンの声援に応える。敢闘門に戻ると同地区の仲間によって2カ所で宙に舞った。「ワッキー(脇本)のおかげですね。新田君のスピードもすごかった。小原君が内にいるのも分かったけど、新田君に合わせないと、と思って無理やり(直線で)外に出した。やはり現役(のナショナル)は強いですね」と人懐こいセイちゃんスマイルで振り返った。

全日本選抜Vで、その後はモチベーションが上がらない時期が続いた。だが、過去何度も優勝を飾り、絶対の自信を持っていた全プロ競技のスプリント(5月、松山)でまさかの準決敗退。「あれが悔しくて、その後すごく練習したみたいですよ」と松尾正人熊本支部長。再び闘志に火をつけて臨んだ結果が「また取れるとは思わなかった」(中川)という今年2度目のG1奪取となった。

G1決勝進出は今回が4回目。3連勝で3回目Vという勝負強さを見せた。脇本の番手が空いているという引きの強さも発揮した。「20年近く自力で頑張ってきた。たまにはこういう勝ち方をしても罰は当たらない。あと5年ぐらいは力を維持して恵まれたいですね」。最後まで周囲を笑いの渦に巻き込んだ。

この日は父の日。15年に亡くした父もきっと天国で拍手を送っているはずだ。【栗田文人】