試合後のFW大儀見優季(27=ウォルフスブルク)は、笑みを浮かべていた。泣きじゃくるGK海堀を気丈に抱きしめ、慰めた。「そこまで悔しい気持ちがわいてこない。完全にやられたからだと思う」。複雑な感情を正直に吐き出した。

 意地は見せた。大量4点を追う前半27分、MF川澄の右クロスをペナルティーエリア中央で収める。ゴールを背に右へ反転した勢いで左足を振った。世界最高GKソロの右手をはじき飛ばし、ゴール左に押し込んだ。あと1分ゴールが遅かったら、米国の連続無失点がW杯1大会の最長記録となる513分に到達していた。偉業を止めてチームの逆転への希望をつないだ。

 それでも流れを止められなかった。決勝ワーストの5失点完敗。たたきのめされた中、あふれ出た感情は将来への心配だった。「今までは数的優位をつくってきたけど、1対1で個人で上回れるサッカーができないとダメ」。自分自身も責めた。前回大会で優勝した後にブンデスリーガ得点王に輝いたが、比例してマークが厳しくなった。その中で2得点にとどまり「何か役割を果たせたかと考えると、自信を持って言えることはない」と、悔しがった。

 今大会わずか1失点の米国から2点を奪った。4年前の優勝時はピッチにいなかった有吉、宇津木、菅沢が決勝の舞台を経験した。それでも不安だ。「ここで何かを変えないと、女子サッカーが本当の意味で評価されて、進化していかない」。日本への警鐘は、エースの仕事を果たせなかった自分の胸にも響いている。