大エースの山登りもあるぞ-。箱根駅伝(来年1月2、3日)で2年ぶりの覇権奪還を狙う東洋大が14日、埼玉・川越で練習を公開。会見で酒井俊幸監督(37)は、勝負の鍵を握る山登りの往路5区に、設楽啓太(4年)を投入する構えを示した。その設楽啓も「柏原さんの記録にチャレンジしたい」と意欲。双子の弟悠太(同)との最後の駅伝で、有終の美を飾る。

 「新・山の神」の威光は鉄紺軍団にとって、誇りでもあり重圧でもある。柏原竜二(現富士通)を擁し3度の優勝を成し遂げた東洋大だが、今年は「脱柏原」に失敗し、日体大・服部に山登りで逆転された。山に潜む魔物。良くも悪くも脚光を浴び、チーム浮沈のキーマンが指名される。怖さも同居するが、設楽啓はキッパリ言った。「5区に関しては、怖がっていては走れません。攻めの気持ちを忘れずに挑みたい」。

 今年の失敗を「柏原に匹敵する選手を養成できなかったこと」と痛感した酒井監督。今年5区を走った定方は故障で間に合わないが「他にめどが立った」と言い、さらに「エースの投入も考えています」と断言した。設楽兄弟、服部勇馬、田口雅也らが同監督の言う「エース」だが、中でも設楽啓は最有力。

 各選手には2つの区間候補を告げているが、3年連続2区を走った設楽啓には、5区のイメージを強烈にインプットしている。「5区でも不安はない。柏原さんの走りからは、どんな状況でも全力を出し尽くすことを感じた。その柏原さんの記録に、どれだけ挑めるか、チャレンジしたいです」。

 「もう誰にも破られない」とまで言われる1時間16分39秒の区間記録。それを打ち破るぐらいでなければ、高校時代からのライバルで、やはり5区候補の日体大・服部には勝てない。柏原卒業後の学生3大駅伝で、5大会連続2位に甘んじる東洋大。「山の神」を襲名するのは、このキャプテンしかいない。【渡辺佳彦】

 ◆設楽啓太・悠太(したら・けいた、ゆうた)1991年(平3)12月18日、埼玉県寄居町生まれの双子。埼玉・男衾(おぶすま)中-武蔵越生高。3年で全国高校駅伝出場。東洋大1年時からそろって箱根出場。1年時からの箱根駅伝は兄啓太がすべて2区で7位、2位、3位。弟悠太は3区8位、7区区間新、3区区間賞。1、3年時に2、3区で兄→弟のタスキリレーが実現。身長、体重は兄が168センチ、49キロ。弟は167センチ、46キロ。1万メートルは兄が27分51秒54、弟は27分54秒82で日本陸上史上初の兄弟27分台を達成。