<第90回箱根駅伝>◇2日◇往路◇東京-箱根(5区間108キロ)

 ツインズ投入のかけに出た東洋大が、5時間27分13秒で2年ぶり5度目の往路優勝を果たした。2位でタスキを受けた双子の設楽兄弟の弟悠太(4年)が3区で区間賞をマークし、トップの座をライバル駒大から奪取。首位を明け渡すことなく、最後は補欠登録から5区にエントリーされた兄啓太(同)も区間賞締め。駒大に59秒差をつけ、トップで芦ノ湖畔を駆け抜けた。今日3日の復路に、2年ぶり4度目の総合優勝をかける。

 号砲が霊峰富士に向かってとどろく中、フィニッシュラインをエースの主将が駆け込む。胸の前でガッツポーズをとり、設楽啓が歓喜の輪に飛び込んだ。一昨年から5大会続く2位の呪縛からの解放。会見で酒井監督も「(優勝校が座る)ここの席は久しぶりで懐かしい」と一息ついた。あの「新山の神」柏原竜二(現富士通)が4年連続で導いた往路優勝の指定席に、鉄紺軍団が戻ってきた。

 吉兆は「遊覧船」だ。前日の元日、芦ノ湖の遊覧船は強風のため運航休止。一夜明けたこの日、風は収まり通常運航に。天候や風向き、風速を事細かにスタッフが観測。昨年とは一転、「非常に穏やかな」(同監督)条件下、自信を持って送り出したのが、設楽啓だった。

 駒大に21秒差をつけてスタート。初の山登りにも気負わず、1万メートル27分台のスピードを生かした軽快なピッチを刻む。駒大との差を59秒に広げ、高校時代からのライバルで昨年の区間賞男、日体大・服部に1秒差をつけ区間賞を獲得。「服部を意識した中での区間賞はうれしい。5区は(昨年11月の)全日本後から覚悟してました」。走法や49キロの軽量から、強風なら5区回避の選択肢もあった中、天も味方に付けた。

 火を付けたのが、弟悠太だ。箱根では1年から花の2区で7、2、3位と無冠の兄に対し、弟は2つの区間賞。26秒差で首位を走る駒大を9キロ付近で捉え、一気のスパートで突き放し3年連続の区間賞だ。「僕が優勝を決定づけるつもりだった」と胸を張り、個人的な喜びも「最終学年で兄弟で区間賞を取れてうれしい」と喜びを隠さない。宿舎が違った前夜、メール交換で交わした「区間賞取れよ」の誓いを実現した。

 設楽兄弟に2区を走った服部勇。駒大の「4本柱」に比べ、エースが1枚足りない。できれば兄弟の1人は復路に回す余裕が欲しかった。当日エントリーの2枚投入は、それが失敗に終われば復路で巻き返し不能を意味する。いわば「かけ」が当たったわけで、酒井監督も「総合優勝するには、まず往路優勝しなければならない。往路優勝のためには設楽兄弟で臨む。想定通り」と胸をなで下ろした。

 駒大との差は59秒。安全圏でないことは承知済みで、笑みはすぐに封印した。「設楽兄弟に頼るのでなく、兄弟を生かすチームで総合優勝したい」と酒井監督。2年ぶり覇権奪回の夢は、復路に託された。【渡辺佳彦】

 ◆箱根双子兄弟同時区間賞

 日体大の坂本亘、充は78年から3年連続出場。78年に兄6区、弟8区で達成。80年には兄9区→弟10区のリレーで、計2度達成しともに総合優勝。昨今は双子ランナー全盛。今回は大東大の市田孝・宏、順大の松村優樹・和樹、村山謙太(駒大)・紘太(城西大)も双子。ちなみに柏原竜二(現富士通)、酒井俊幸監督も双子で東洋大は双子ばやり?