<第90回箱根駅伝>◇2日◇往路◇東京-箱根(5区間108キロ)

 史上4校目の3冠が見えた。今季の出雲、全日本を制した駒大が、5時間28分12秒で走りきり、優勝した東洋大に59秒差の2位と好位置につけた。大八木弘明監督(55)は「想定内」と話し、主将でエースの窪田忍(4年)が控える復路での逆転に手応えあり。90年度大東大、00年度順大、10年度早大に続く3冠へ、大手町を目指す。

 芦ノ湖を前にして、指揮官の声が箱根路に響く。「男だろ!」。監督車からの拡声器で、標高差約800メートルを登ってきた5区馬場に最後のムチを入れる。涙ながらにゴールに飛び込んだ2年生の快走に「合格点」とうなずき、前を行く東洋大とのタイム差を見やる。59秒差-。復路の戦況を頭に巡らせる。「想定内。もう少し詰めてほしかったけど、なんとか収まった」。今季3度目の大学駅伝の頂上へ、はっきりと“登山道”が見えてきた。

 2区でも必死の声が響いていた。「落とせ!」。2位でタスキを受け取った村山(3年)が、想定外のペースで走り始めていた。最初の5キロを14分30秒で入るはずが、14分02秒。案の定中盤以降に両太もも、両膝裏の4カ所にけいれんを起こし、タイムが伸びない。

 「あそこで1分速ければ、山登りがもうちょっと面白い映像になったのに…」。誤算もあったが、余裕のある口調で振り返れたのは、その後のうれしい誤算のおかげ。お祭り好きという1年の中谷が4区で歴代2位の区間賞で走れば、昨年1月の新チームでのミーティングで「5区をやりたい」と直訴した馬場も区間3位と粘りをみせた。

 今季、圧倒的な力を見せる駒大。「若いが、よくやっている」と指揮官はたたえるが、選手はもっと若いときの気持ちを忘れていない。同監督の故郷の福島県会津坂下町での市民マラソンに参加して3年目。復興支援の役に立ちたいと、昨年は出雲駅伝後の10月19日に、小学生約100人にランニング教室を実施。同監督は「人のつながりの大切さを学んでほしいし、その中で走る楽しさをあらためて子供たちから教わる部分があると思う」という。走る原点を見つめ、学生らは日々の鍛錬を積んできた。

 98年度、同じように3冠に挑んだが、あと少しで夢は散った。8区まで首位をキープしながら、終盤の2区で順大に逆転を許して2位。15年後、今度は同じ轍(てつ)は踏まない。補欠の主将の窪田を、9区に起用することが濃厚だ。「そこまで1分差以内で来たら…。楽しい映像になるんじゃないかな」。その画面には、指揮官の歓喜の叫びも重なるはずだ。【阿部健吾】