少年女子B100メートルで、御家瀬(みかせ)緑(恵庭北高1年)が前日の走り幅跳びに続き優勝した。準決勝で今季高校女子最速の11秒66(追い風0・7メートル=大会新)をマークし、その勢いで決勝を制した。初出場の国体で2冠達成。北海道ハイテクAC中村宏之監督(72)が「未知数」と評する逸材が、全国舞台でニューヒロインに躍り出た。

 一夜にして陸上界のニューヒロインになった。決勝を走り終えた御家瀬は、10社を超える報道陣に瞬く間に包み込まれた。「(2社の)昨日よりすごく囲まれて、びっくりしました」。会場を引き揚げる際、多くの子どもにサインを求められた。「御家瀬緑」と慣れない手つきで、丁寧にペンを走らせた。

 決勝の2時間20分前の準決勝で会場を沸かせた。土井杏南(当時埼玉栄1年)が記録した大会記録を0秒01更新する11秒66、今季の高校女子最速のタイムで駆け抜けた。「足が絡まった感じもあったけど、気持ちよかった」。勢いに乗った決勝は向かい風1・0メートルの条件下、2位に0秒18差をつける、11秒83でゴールした。前日の走り幅跳びに続き「2冠を決められてうれしい」と喜んだ。

 伸びしろは無限大だ。中村監督も「今までにないタイプで未知数。100メートルも走り幅跳びもまだまだ伸びるから、おもしろい」と相好を崩す。高校入学後は「スタート姿勢は高いが、4、5歩目からトップスピードに乗る力がある」(中村監督)特長を生かすため、つま先をまっすぐ上げて地面に下ろす練習を積んだ。さらに「ずっとあこがれていた」という全国中学女王、町井愛海(恵庭北1年)ら同学年の走りに刺激を受け、入学前12秒18の自己ベストを半年で0・52も縮めた。

 両親の支えもあった。札幌太平中時代、母千佳さん(51)が週3日、北海道ハイテクACジュニアに送り迎えした。父典之さん(51)は「同世代が中学で活躍しても、体ができるのを待った」と、無理な筋力トレを避け、体の成長を待った。高校入学を機にオーダーメードで新調したスパイクを贈った。御家瀬は「なかなか合うシューズがなかったけど、今はぴったり合ってます」と喜ぶ。

 国体2冠で追われる立場に変わった。御家瀬は「まわりと戦うよりも、100メートルでも走り幅跳びでも、自分の記録を更新し続けたい」。ニューヒロインの視線は、輝く未来に向けられている。【浅水友輝】

 ◆御家瀬緑(みかせ・みどり)2001年(平13)6月2日、札幌市生まれ。札幌太平小2年で競技を始め、6年冬から北海道ハイテクACジュニアに所属。100メートルでは札幌太平中3年のジュニア五輪で6位入賞。恵庭北1年で9月の全道新人大会で優勝。家族は両親と兄姉。161センチ、49キロ。