男子4×100メートルリレーの日本チームが出場し、昨年のロンドン世界陸上金メダルの英国や、アジアのライバルである中国と激突する。日本勢は個人種目でも男子200メートルに小池祐貴(23=ANA)、女子3000メートルに鍋島莉奈(24=JP日本郵政グループ)がエントリーした。

 会場はオリンピックや世界陸上が行われてきたロンドン・スタジアム。昨年の世界陸上金メダリストは、男子5000メートルで地元ヒーローのモー・ファラー(35=英国)を破ったムクター・エドリス(24=エチオピア)ら8人エントリーした。また2012年ロンドン五輪で活躍した選手たちが、思い出の地で競技生活に区切りをつけたり、再起を期して出場したりする。

 日本の4×100mリレーはリオデジャネイロ・オリンピック(五輪)銀メダルのメンバーのうち、2走の飯塚翔太(27=ミズノ)と3走の桐生祥秀(22=日本生命)、4走のケンブリッジ飛鳥(25=ナイキ)の3人は現地入りしたが、1走の山県亮太(26=セイコー)はベルギー遠征中に左脚大腿(だいたい)部の違和感が生じたため帰国した。

 6月の日本選手権100メートルに優勝した山県を欠くのはマイナスだが、慶大の後輩にあたる小池が成長してきた。14日のベルギーの大会では200メートルで20秒29と、自己記録を大幅に更新している。小池を山県の代わりに1走に起用するのか、走順を入れ替えるのか。

 今季から日本の4×100mリレーは、合宿でじっくりとバトンパスを行うスタイルから、単日の合同練習や試合を重ねて研きをかけるスタイルに変更している。5月のゴールデングランプリにはリオ五輪メンバーで出場し、37秒85の今季世界最高で米国、中国を相手に圧勝した。そのタイムで来年の世界陸上出場資格は確保できている。小池や日本選手権200メートル3位の山下潤(20=筑波大)ら、新しいメンバーを入れたチームを組むチャンスでもある。

 男子走り幅跳びのグレッグ・ラザフォード(31=英国)は、今季限りの引退を表明している。2014年には8メートル51の英国記録を作り、2015年の世界陸上でも優勝した選手だが、1番印象に残っているのは6年前のロンドン五輪の金メダルだ。

 8月4日にラザフォード、女子7種競技のジェシカ・ユニス・ヒル、男子1万メートルのファラーの英国勢が44分の間に続けて金メダルを獲得し、“マジカル・フォーティフォー”と言われた。

 ラザフォード自身、今大会前の会見で「週末のロンドン・スタジアムは感傷的になると思う」とコメントしている。

 男子100メートルに出場するヨハン・ブレイク(28=ジャマイカ)はかつて、“ポスト・ボルト候補”の先頭を走っていた選手。

 2012年に9秒69の世界歴代2位タイをマークし、その年のジャマイカ選手権ではウサイン・ボルトを破っていた。だが、ロンドン五輪ではボルトの勝負強さの前に敗れ、100メートル、200メートルとも銀メダルに終わった。

 翌2013年に大きな故障をして低迷。徐々に復調してきたがリオ五輪、昨年のロンドン世界陸上とも100メートルは4位でメダルに届いていない。ロニー・ベイカー(24=米国)やクリスチャン・コールマン(22=米国)らが好調で、今大会も優勝候補とはいえない。

 だがブレイクにとってロンドン・スタジアムは、ボルトを破っていれば歴史に名前が残った場所だ。そこでもう1度“ポスト・ボルト候補”のトップに立ちたい。

 ◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する単日、または2日間開催では最高カテゴリーの競技会シリーズ。2010年に発足し、一昨年までは年間総合ポイントで各種目のツアーチャンピオンを決定していた。昨年からシステムが変更され、ファイナル大会出場者を決めるクオリファイリング大会として12大会を実施し、16種目ずつを行うファイナル2大会の優勝者がダイヤモンドリーグ優勝者となるチャンピオンシップ形式になった。各クオリファイリング大会の種目別賞金は3万ドル(1位1万ドル~8位1000ドル)で、各種目は年間4~6大会で実施される。各大会のポイント(1位8点~8位1点)合計上位8人(種目によっては12人)がファイナル大会に進出。ファイナル大会の種目別賞金は10万ドル(1位5万ドル~8位2000ドル)で、年間優勝者には賞金5万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈されるのに加え、来年の世界陸上への出場権が得られる。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝で行われるため、緊張感あるレースがスピーディーに続く。また、オリンピックや世界陸上のように1種目3人という国毎の出場人数制限がないため、ジャマイカ、アメリカ勢がそろう短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目など、五輪&世界陸上よりレベルが高くなるケースもある。