全日本実業団対抗女子駅伝予選会(福岡県)で、倒れて走れなくなり、四つんばいになってたすきを渡した岩谷産業の2区・飯田怜(19)が骨折していた右すねの手術を受けることが24日、分かった。21日のレース後に福岡県内の病院に入院したが、近日中に大阪府内の病院に移って修復手術を受ける。このアクシデントを「美談」とする風潮について、同チームの広瀬永和監督(53)は「これは美談ではない」と指摘した。

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ボクシングで選手がグロッギー状態になった。次のパンチで、深刻なダメージを受けるかもしれない。セコンドが自分の選手を守るために、棄権を申し出たとしよう。そこで審判が「まだファイティングポーズをとっている」「まだ意識がしっかりしている」という理由で、試合を続行させるだろうか。1秒後に痛烈なパンチを受けて病院に運ばれたら、後遺症があったら…。審判は責任がとれないから即刻、止める。セコンドが棄権を決断した以上「まだいけそうだ」などという審判の主観は必要ない。

今回の件で、広瀬監督は「やめてくれ」と主催者側に伝えた。主催者側から、チームの棄権の意向を伝えられた審判は「選手に続行の意思がある」とそれを“差し戻して”同監督に再確認している。通常、棄権や中止の要請を受けた審判や係員はランナーを止めている。チームの現場責任者が棄権を申し出た以上、「いけそうだ」「残り15メートル、あと少し」などという審判の主観はいらない。続行によって選手生命に影響が出るかもしれない。まずはチームから棄権の申し出があれば、審判は主観を挟まずにすぐ止めることを組織として徹底すべきだ。【五輪担当=益田一弘】