陸上男子短距離のサニブラウン・ハキーム(20=フロリダ大)が優勝した。10秒02(向かい風0・3メートル)で1着。

2年ぶりの国内レースで、完全に1段進化したことを証明した。レース前日の会見では「他の人は気にせず、自分の走りをできれば満足」と話していた。

サニブラウンは東京・城西高を17年3月に卒業後、オランダでの拠点を経て、同年秋から米フロリダ大へ進学した。競技に関する設備面だけでなく、スポーツマネジメントも学ぶため、日本を出るという王道とは違う道を選んだ。92年バルセロナ五輪100メートル銅メダリスト、デニス・ミッチェル(米国)らを育てたマイク・ホロウェイ・ヘッドコーチらのもと、スタートを改良した。もともと後半型の選手だが、加速は滑らかに。今年3月には60メートル室内日本タイ記録の6秒54を出していた。後半の加速に、苦手なスタートを克服すれば、速いのは当然だった。

もともと10秒切りへの執着はない。東京・城西高時代から「持つなら大きな目標がいい」と当時の日本記録10秒00でなく、ウサイン・ボルト(ジャマイカ)が持つ世界記録9秒58を目標に掲げた。もちろん今も本気で目指している。「10秒00」も「9秒99」も認識は同じ。「10秒の壁」など意識ない。

日本新記録の9秒97で走った時も満点の走りではなかった。中盤以降の過剰なストライド、腕振りなど修正点は多かったという。存在する修正点は記録への余地でもある。まだまだ進化を続けそうだ。